幣帛

幣帛（へいはく）とは

幣帛とは、神道の祭祀において神に奉献するものの総称です。神饌（しんせん）以外の捧げ物を指しますが、広義には神饌を含むこともあります。「みてぐら」や「幣物（へいもつ）」とも呼ばれます。

「帛」は布を意味し、古代においては貴重であった布が神への捧げ物の中心でした。このことから、幣帛は神への敬意を表す重要な品であると考えられてきました。

幣帛の種類

『延喜式』には、幣帛の品目として、布帛、衣服、武具、神酒、神饌などが記されています。これらは、神への感謝や祈りを込めて捧げられました。

幣帛は、単なる捧げ物としてだけでなく、神の依り代としての意味も持っていました。そのため、串の先に紙垂を挟んだ依り代や、祓具としての幣束・御幣、大麻なども幣帛と呼ばれます。

幣帛の歴史

幣帛の起源は、古墳時代の副葬品にまで遡ることができます。古墳時代前期の遺跡からは、鉄製品に加えて、紡織具や布帛、須恵器など、当時の最新技術で作られた製品が出土しています。これらの品々は、『延喜式』に記された幣帛の品目と共通しており、律令制祭祀における幣帛の原型となったと考えられます。

律令制度下では、朝廷が祈年祭、月次祭、相嘗祭、新嘗祭などで、各神社の祝部（はふりべ）に幣帛を配布していました。これを「班幣（はんぺい）」といいます。

明治時代になると、「神社祭式」によって、幣帛として布帛などの現物に加え、金銭を紙に包んだ「金幣」も用いられるようになりました。金幣は、地方庁を通じて地方長官から神に供進されました。現在では、神社本庁から各神社の例祭に「幣帛料」として金銭が贈られています。

明治～大正期の幣帛料

官国幣社以下の幣帛料は、「大正8年式部長官通牒」や「大正9年内務省訓令第14号」などによって定められていました。例祭の幣帛料は、府県社以下においては1社分とされ、三祭に幣帛料が供進されるのは、村社以上の供進指定神社に限られていました。

なお、神宮への幣帛は法令ではなく慣行によって定められていました。

幣帛に関する単位

寸法は曲尺で表され、1絢は64匁、1斤は80匁、1両は5分とされていました。また、1疋は2反、1反は2丈とされていました。

奉幣使と献幣使

勅命により幣帛を奉献することを「奉幣（ほうへい）」といい、そのために遣わされる者を「奉幣使」といいます。明治以降は「幣帛供進使」と呼ばれるようになりました。

一方、神社本庁から各神社に幣帛を奉献するための使いは「献幣使」といいます。

幣帛に関する和歌

菅原道真の和歌には、「このたびは幣もとりあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに」（『古今和歌集』）とあり、幣帛が神への捧げ物として重要な役割を果たしていたことがうかがえます。

幣帛用具

幣帛を奉奠する際には、様々な用具が用いられます。幣帛は「案」に載せられ、案の下には「薦」が敷かれます。幣帛料は「大角」に載せられます。鏡などを納めたり、短冊を載せたりする時には「柳筥」を用い、幣帛を納める場合には「折櫃」を使用します。装束や神宝などは「辛櫃」に納め、宮中へ品物を奉献する場合には「雲脚台」に乗せます。なお、神社に古例があれば、それに従うとされています。

幣帛は、神道の祭祀において神への感謝や祈りを捧げるための重要な要素であり、その歴史と意味を知ることは、日本の文化を理解する上で欠かせないものと言えるでしょう。

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