尹錫悦韓国大統領弾劾訴追

尹錫悦大統領弾劾訴追事件の経緯と影響

2024年12月14日、韓国国会において尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領に対する弾劾訴追案が可決されました。これは、韓国憲政史上3度目となる大統領の弾劾訴追であり、その後の政局に大きな影響を与える出来事となりました。

弾劾訴追に至るまでの経緯

事の発端は、同年12月3日、尹大統領が緊急テレビ演説で非常戒厳（戒厳令）を宣言したことに遡ります。尹大統領は演説の中で、野党勢力が自由民主主義体制の転覆を企てていると非難し、国民に「多少の不便」を我慢するよう求めました。この戒厳令は、全斗煥（チョン・ドゥファン）軍事独裁政権下の1979年以来、韓国で初めてのことであり、国民に大きな衝撃を与えました。

戒厳令下では、野党「共に民主党」の李在明（イ・ジェミョン）代表をはじめ、与党「国民の力」の韓東勲（ハン・ドンフン）代表、禹元植（ウ・ウォンシク）国会議長、さらには市民活動家まで、与野党問わず多くの人々が逮捕リストに挙げられました。また、逮捕された政治家関係者を収監施設に連行する計画もあったとされています。

野党による弾劾訴追案の提出

この事態を受け、最大野党の「共に民主党」は他の野党とともに、12月4日に尹大統領の弾劾訴追案を国会に提出しました。韓国の憲法では、弾劾には国会議員の過半数による発議と、3分の2以上の賛成が必要とされており、弾劾が成立した場合、憲法裁判所が罷免の可否を判断することになります。

弾劾訴追案提出後、国防部長官が引責辞任し、戒厳司令官も辞意を表明するなど、政府内でも混乱が広がりました。当初、与党「国民の力」は弾劾案に反対していましたが、同党の代表である韓東勲氏が、尹大統領が戒厳令を指示した根拠や、政治家を逮捕するために情報機関を動員したことなどを確認したとして、弾劾案への賛成に転じました。

12月7日に行われた弾劾訴追案の採決では、与党議員の多くが投票を棄権する事態となりました。投票期限が延長されたものの、最終的には定足数不足で採決は成立せず、弾劾案は一旦廃案となりました。しかし、野党側は弾劾案を再度提出する方針を示し、事態は収束に向かいませんでした。

二度目の弾劾訴追案可決

その後、12月12日に再度弾劾訴追案が提出され、14日に採決が行われました。前回の弾劾訴追案に含まれていた価値外交に関する内容が削除された一方で、戒厳をめぐる新たな証言に基づいた内容が追加されました。その結果、2度目の弾劾訴追案は、国会議員の3分の2以上の賛成を得て可決され、尹大統領の職務は停止されました。

弾劾訴追案可決後の尹大統領の談話

弾劾訴追案可決を受け、尹大統領は国民に向けた談話を発表しました。その中で、自身のこれまでの政治活動を振り返り、成果を強調するとともに、「一旦立ち止まりますが、決して諦めません」と述べ、今後の政権運営への意欲を示しました。

憲法裁判所による審議と今後の影響

弾劾訴追案が可決されたことで、今後は憲法裁判所による審議が行われます。憲法裁判所は、尹大統領の罷免を認めるかどうかを判断し、その結果によっては、韓国の政治情勢が大きく変わる可能性があります。また、弾劾訴追案可決後には、尹大統領の弾劾を歓迎する発言をした歌手のコンサートがキャンセルされるなど、社会的な影響も出てきています。

今回の弾劾訴追は、韓国政治における混乱の深刻さを改めて示す出来事となりました。今後の憲法裁判所の審議の結果や、その後の政治情勢の推移が注目されます。

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