国民の力

国民の力：韓国保守政党の歩み

概要

国民の力は、韓国の主要な保守政党です。2022年5月より大統領府を担う尹錫悦政権与党であり、共に民主党と並ぶ韓国政治の二大勢力の一つです。前身は、ハンナラ党、セヌリ党、自由韓国党など、1997年以降韓国保守派の中核を担ってきた政党群です。2020年2月、複数の保守系政党の統合により「未来統合党」として発足、同年9月に現在の党名に変更されました。

結党と保守勢力の再編

韓国保守派は、2017年の大統領選挙敗北以降、影響力の低下に直面していました。崔順実ゲート事件や朴槿恵大統領弾劾なども影響し、保守政党は分裂状態に陥っていました。この状況を打開するため、自由韓国党、新しい保守党、未来に向けた前進4.0の三党が統合し、未来統合党が誕生しました。比例代表制に対応するため、未来韓国党も連携政党として存在していましたが、後に吸収合併されました。しかし、他の保守系政党は、それぞれ異なる道を歩むこととなりました。

第21代総選挙と党名変更

2020年4月の第21代総選挙で、未来統合党は共に民主党に大敗しました。議席数は予想を大きく下回り、党代表の黄教安は辞任に追い込まれました。選挙結果を受けて、党は高齢者層への支持偏重や、世論との乖離、不適切な行動などが敗因として分析されました。保守系メディアからも厳しい批判を受けました。その後、党は金鍾仁を非常対策委員長に選出し、党名変更を含む抜本的な改革に着手、同年9月に「国民の力」に改名しました。

党改革と大統領選挙

2021年4月に行われたソウル市長と釜山市長補欠選挙で勝利した国民の力は、党代表に李俊錫を選出。若返りを図り、大統領選に向けた準備を進めました。尹錫悦や崔在亨といった有力候補の入党により、反文在寅政権の勢力として台頭しました。しかし、国民の党との合流交渉は失敗に終わりました。同年、党内選挙を経て尹錫悦が大統領候補に選出され、2022年3月の大統領選挙で僅差ながら勝利、政権交代を実現しました。

政権獲得と地方選挙

尹錫悦政権発足後、国民の力は5年ぶりに与党へ復帰しました。これは、1987年以降続く保守・革新政党の10年周期政権交代説を覆す出来事となりました。続く6月の地方選挙でも圧勝し、行政権と地方権力を掌握しました。この勝利は、文在寅政権への対抗意識の高まりと国民の期待の高さを反映していたと考えられます。

党内紛争と新指導部

しかし、政権発足後の国民の力は、党内紛争に直面しました。李俊錫代表の懲戒処分をきっかけに、親政権派との対立が激化し、党運営は混乱しました。政府の支持率低下も追い打ちをかけ、国民の力の支持率は共に民主党に逆転されました。この状況を打破するため、非常対策委員会が発足し、2023年3月には金起炫が新代表に選出されました。党大会では、党代表選挙の当選方式が変更され、金起炫が圧勝しました。また、脱北した元北朝鮮外交官の太永浩が最高委員に選出されたことも注目を集めました。

党勢低迷と総選挙

2023年も国民の力の支持率低迷は続き、「首都圏危機論」が浮上しました。10月のソウル江西区庁長補欠選挙での敗北を受け、党内には危機感が広がりました。2024年4月に行われた第22代総選挙では、108議席と過去最低の議席数を獲得する結果に終わり、ねじれ国会が継続し、保守政党としても最低水準の結果となりました。この結果を受け、党内は再び再編を迫られることとなりました。

結論

国民の力は、韓国保守勢力の再編、政権奪還、そしてその後の苦境という、激動の時代を経験しました。今後の党の行方、そして韓国政治全体に大きな影響を与える存在であることは間違いありません。今後の動向に注目が集まります。

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