尺振八

尺振八（せき しんぱち）の生涯と業績

尺振八は、1839年9月16日（天保10年8月9日）に江戸の佐久間町に生まれた日本の洋学者であり教育者です。彼の父、鈴木伯寿は高岡藩の医者であり、上総出身でした。振八は幼少期から英語に興味を抱き、著名な洋学者である中浜万次郎や西吉十郎から英語を学んだとのことです。

彼は1861年に幕府に仕官し、文久遣欧使節団に同行するなど、日本の外務に関与しました。特に福澤諭吉と共に翻訳方として活動し、その経験が後の彼の教育活動や著作に大きな影響を与えました。1886年に肺結核で亡くなるまで、振八は日本における教育と洋学の発展に貢献しました。

教育活動と共立学舎の設立

明治3年（1870年）、尺振八は東京都両国に共立学舎を設立しました。この英学校は、当時の自由民権運動の重要な拠点となり、多くの有能な学生を輩出しました。しかし、共立学舎は後に政治的な理由から閉鎖されることになります。閉鎖後、振八は大蔵省に仕官し、翻訳局長の職に就いています。

彼の教育への情熱は旺盛で、明治8年（1875年）には英語教育に専念することを決意しました。彼の指導を受けた門下生には、後に著名な教育者となった島田三郎や田口卯吉がいます。

社会学の用語創出と著作

振八はハーバート・スペンサーの『斯氏教育論』を翻訳した際に、「sociology」を「社会学」と訳したことで知られています。この訳語は、現在でも広く用いられている用語です。また、彼は『明治英和字典』や『傍訓 英語韵礎』といった重要な著作を出版し、英語教育の基盤を築きました。

家族と人間関係

尺振八の家族についても興味深いエピソードがあります。彼の父は高岡藩医であり、母は伯寿の後妻です。振八は義弟である尺兼治とともに昌平黌に入学し、幕臣になるための仲介を得ています。彼は28歳でキクと結婚し、彼らの間には子どもが一人誕生しました。着目すべきは、晩年の弟子である尺秀三郎です。秀三郎は、尺振八の死後、尺家を継承し教育界でも重要な役割を果たしました。

遺言と影響

1886年、尺振八は肺結核で亡くなる前に、結核の流行を防ぐために全ての遺品を焼却するよう遺言しました。このため、彼が手掛けていた英語辞書の原稿も焼却されています。彼の生涯を通じて、日本における洋学教育と社会学の発展に多大な影響を与えた人物として評価されています。彼の業績は今なお、多くの教育者や学者に影響を与えており、明治維新を経て日本が近代化する過程において、彼の貢献は欠かせないものといえるでしょう。

もう一度検索