尾崎局

尾崎局：毛利家を支えた賢夫人

尾崎局（おざきのつぼね）は、戦国時代の激動期を生きた女性です。大永7年（1527年）または享禄元年（1529年）に、大内氏の重臣である内藤興盛の娘として生まれました。彼女の生涯は、毛利家の隆盛と深く結びついています。

大内氏との縁、そして毛利家へ

尾崎局は、大内義隆の養女となり、安芸国の戦国大名・毛利隆元の正室として嫁ぎました。この縁組は、当時、大内氏の傘下にあった毛利家にとって、その地位を安定させる上で重要な意味を持っていました。元就自身も尾崎局を「御屋形様（大内義隆）から賜った」ものとして丁重に扱い、大内氏との意思疎通の架け橋として信頼を置いていました。

毛利家を支える母として

尾崎局は、毛利隆元との間に、後の毛利家を継ぐ輝元をはじめ、徳鶴丸、津和野局をもうけました。特に輝元の養育には心血を注ぎ、その成長を陰ながら支えました。夫である隆元が戦で吉田郡山城を留守にしがちな間、尾崎局は輝元に対し、時には厳しい異見をすることもあったようです。しかし、輝元はなかなか言うことを聞かず、尾崎局は苦労した様子が、隆元に宛てた手紙からも窺えます。

隆元の急死後、尾崎局はさらに輝元の養育に力を入れました。元就から輝元の養育について指示があった際も、表面的には従いつつも、「輝元の養育については私が油断なく申し聞かせますのでご安心ください」と述べて、元就からの口出しを遠回しに断っています。このことから、彼女が強い決意を持って輝元の成長を見守っていたことがわかります。元就は彼女を分国経営に参与させ、敬意を払っていたことが伺えます。

晩年と家族への想い

元亀2年（1571年）に毛利元就が亡くなると、尾崎局は輝元の後見を吉川元春に依頼しました。その書状には、「頼れるのは叔父の元春・隆景だけ。親ともなり力になってほしい」と、切実な想いが綴られています。また、娘である津和野局の死に深く悲しみ、体調を崩したことが記録されています。

元亀3年（1572年）9月30日、尾崎局は44歳または46歳で亡くなりました。彼女の墓は、広島県安芸高田市の洞春寺跡にあります。当初は菩提寺である妙寿寺に葬られましたが、後に毛利一族の墓所に移されました。

尾崎局は、大内氏との繋がりを保ちながら、毛利家を内側から支えた賢夫人でした。彼女の存在は、毛利家の隆盛に欠かせないものだったと言えるでしょう。

もう一度検索