尾流雲

尾流雲（virga）

尾流雲（びりゅううん、学術名: virga）は、雲から降水が落下するものの、地表に到達する前に蒸発または昇華してしまう現象を指します。降水条（fall streaks）とも呼ばれます。地上に達すれば通常の降水雲となります。

特徴

尾流雲から垂れ下がる筋は、垂直なものもあれば、斜めになっているもの、途中で曲がっているものもあります。筋が曲がる主な原因は、雨粒の蒸発（氷晶の昇華）によって粒径が小さくなり、終端速度が遅くなるためと考えられます。また、鉛直方向のウインドシア（高度による風向・風速の急変）も影響することがあります。

発生しやすい雲

尾流雲は、主に以下の雲で見られます。

巻[[積[[雲]]]]
高積[[雲]]
高層雲
乱層雲
層積[[雲]]
積[[雲]]
* 積乱[[雲]]

特に高層雲や乱層雲では、ほとんどの場合に尾流雲が見られます。層積[[雲]]では、非常に低温の環境下で稀に発生します。

高層雲の下部と尾流雲の区別は難しい場合があります。巻[[積[[雲]]]]では小さな尾流雲が見られ、塔状[[雲]]や房状雲によく伴います。高積[[雲]]では、多くの雲種で尾流雲が見られ、特に房状高積[[雲]]は広がり消えていく過程で氷晶でできた白い尾流雲を作り、巻[[雲]]へと変化することがあります。薄い雲では、尾流雲が発生した後に雲自体が消えてしまうこともあります。

副変種の一つであるcavumは、しばしば尾流雲を伴います。

影響

尾流雲が発生している場合、地上で降水が観測されなくても、上空を飛行する航空機などは降水を受ける可能性があります。

また、尾流雲は降水雲と同様に、虹が見られることがあります。

ドライダウンバーストとの関連

特定の条件下では、尾流雲で起こる水滴の蒸発が「乾いたダウンバースト（ドライ・ダウンバースト）」を引き起こすことがあります。これは、湿度の低い乾燥した大気の上に湿った大気があり、尾流雲が発生している場合に起こりやすくなります。蒸発する水滴が大気から熱を奪い、下降気流が発生します。地上のレーダーでは高い高度の尾流雲を観測できない場合があり、航空の安全を脅かす可能性があるため注意が必要です。アメリカ中西部など乾燥が強い地域では、急激な下降気流によって空気が圧縮され、温度が上がるヒートバースト(Heat burst)も観測されており、猛烈な突風を発生させることが知られています。

語源

ラテン語の"virga"は、棒、笏、杖、枝などを意味します。

元気象庁長官の吉武素二氏によれば、"virga"の訳語が「尾流雲」となったのは、終戦直後に国際[[雲図帳]]の翻訳に際して、virgaの訳語が必要になり、ビルガ→ビリュウ→尾流雲と連想し、「尾流雲」という訳語が観測法改訂委員会により認められたためとされています。この訳語は、昭和25年1月に中央気象台が発刊した『地上気象観測法』（暫定版）において初めて使用されました。

もう一度検索