尾長天満宮

尾長天満宮は、広島県広島市東区山根町に位置する神社で、広島を代表する天満宮の一つとして知られています。この神社は、大穴牟遅命、少名彦名命、そして学問の神様として有名な菅原道真公を合祀しており、地元の人々から深く信仰されています。

神社の概要

尾長天満宮の境内には、鳥居をくぐり随神門を抜けると、本殿や拝殿などの社殿が配置されています。二葉山周辺は、広島城の鬼門にあたることから、築城以来多くの神社仏閣が集まる場所となりました。その中でも、尾長天満宮は「二葉山山麓七福神めぐり」の一つとして数えられ、寿老人の像が祀られています。これらのことから、この地が歴史的に重要な場所であることがうかがえます。

歴史

尾長天満宮の創建は、延喜元年（901年）に遡ります。菅原道真公が太宰府へ左遷される途中、尾長山（現在の二葉山）の麓に船を寄せ、山中で休憩を取った際、村人たちが祠を建てて道真公を祀ったのが始まりとされています。

その後、久安2年（1146年）には、平清盛が安芸守に任ぜられた際、この山で天候が急変し、雷を伴う暴風雨に見舞われました。清盛が道真公に祈ったところ、天候が回復したことから、清盛はこの地を「菅大臣の峰」と名付け、社殿を創建したと伝えられています。

中世以降、安芸武田氏、毛利氏、福島氏といった地域の支配者たちによって、社殿は再建されてきました。江戸時代初期には、広島藩の初代藩主である浅野長晟が連歌師の松尾忠正を京から招き、忠正の霊夢により、山中にあった神社を現在地に移転させました。寛永17年（1640年）には、本殿、拝殿、随神門、石鳥居などが建立され、「尾長天神宮」と称するようになりました。その後、浅野氏によって芸備の祈願所として崇敬されました。

明治時代に入ると、神仏分離によって現在の尾長天満宮という名称になりました。大正15年（1926年）には、集中豪雨で社殿が流出してしまいましたが、昭和10年（1935年）に饒津神社（現：東区二葉の里）境内にあった招魂社を移設し、本殿と拝殿として再建されました。

太平洋戦争中、尾長天満宮は旧陸軍部隊の駐屯地近くにあったため、昭和20年（1945年）8月6日の広島市への原子爆弾投下によって被爆しました。爆心地から約2.6kmの距離に位置していたため、社殿は爆風で倒壊しましたが、焼失は免れました。周辺の東練兵場には多くの被爆者が避難し、翌日には救護所が設置されました。

戦後、昭和22年（1947年）に社殿は修復され、現在の姿に至っています。尾長天満宮は、被爆の歴史を伝える貴重な建物としても、その存在が重要視されています。

「尾長」の由来

「尾長」という地名の由来には、古くからの言い伝えがあります。広島東照宮の西隣には、かつて大きな松の老木があり、その幹の穴に黒蛇が住み着いていました。人々はこの松を「尾長」と呼び、祠を建てて崇めたことが地名の由来とされています。この祠は後に尾長神社として創建されましたが、現在では残っていません。

太宰原天満宮

尾長天満宮の裏手には、「太宰原（だざいがはら）」と呼ばれる場所があります。ここは、菅原道真公が休憩した際に腰を掛けた石があり、その傍らには道真公が植えたとされる梅の木があります。この場所にも祠が建てられ、太宰原天満宮として祀られていました。

その他の天満宮との関連

広島市内には、尾長天満宮の他にも天満宮がいくつか存在します。

西区天満町の天満宮: これは、尾長天満宮から分霊され勧請されたもので、天満町という地名も天神（道真公）にあやかって名付けられました。

中区中島町の天満神社: 元々は安芸高田市吉田町にあった天満宮で、毛利氏によって広島城下に移設されました。こちらも、尾長天満宮と同様に道真公が船で立ち寄った場所に祠が建てられたのが始まりです。

これらのことから、尾長天満宮が広島市域における天満宮信仰の中心的な存在であったことがわかります。

交通アクセス

尾長天満宮へは、JR広島駅から徒歩約15分でアクセスできます。

参考文献

吉田直次郎『広島案内記』友田誠真堂、1913年
広島市『広島原爆戦災誌』(PDF) (改良版), 2005年
広島YWCAヒロシマの今から過去を見て回る会
* 広島ぶらり散歩菅原道真腰掛石

尾長天満宮は、その長い歴史の中で、幾度も再建されながらも、広島の歴史と文化を今に伝える貴重な存在です。被爆の記憶とともに、地域の人々に愛され続けている神社です。

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