屈筋

屈筋とは：曲げる動きを支える筋肉

屈筋（くっきん、英: flexor muscle）とは、骨格筋の一種であり、主に腕や脚などの関節を曲げる動作を行う際に使用される筋肉の総称です。私たちの身体を動かす骨格筋は、屈筋と伸筋という二つの主要なグループに分類され、これらは互いに対照的な役割を担っています。

屈筋と伸筋：拮抗する関係

屈筋と伸筋は、関節を挟んで反対側に位置し、互いに拮抗する関係にあります。例えば、上腕を例にとると、腕を曲げる際に使われる上腕二頭筋が屈筋であり、反対に腕を伸ばす際に使われる上腕三頭筋が伸筋です。これらの筋肉は、一方が収縮するともう一方が弛緩するというように、シーソーのような関係にあります。上腕二頭筋に力が入っているとき、上腕三頭筋はリラックスし、逆に上腕三頭筋に力が入っているときは、上腕二頭筋が緩みます。

姿勢と屈筋・伸筋のバランス

理想的な姿勢においては、屈筋と伸筋のバランスが保たれています。しかし、猫背や反り腰といった姿勢の歪みが生じると、特定の伸筋群が過度に緊張することがあります。例えば、大腿四頭筋、腰方形筋、脊柱起立筋、頭板状筋、僧帽筋などの伸筋群が緊張しやすくなります。バランスの取れたリラックスした姿勢では、これらの伸筋群は過度な緊張はなく、かといって完全に弛緩しているわけではなく、程よい張り具合で身体を筒状に支えています。

肩こりや腰痛と屈筋の関係

肩こりや腰痛といった慢性的な痛みは、多くの場合、伸筋または伸筋側の筋膜に生じます。しかし、その根本的な原因は、屈筋群の過緊張（拘縮）にあることが多いのです。屈筋群の過緊張が持続すると、伸筋側に常に引っ張られる力が働き、その結果、伸筋側の筋膜にトリガーポイントが形成されやすくなります。トリガーポイントからは、ブラジキニンなどの発痛物質が放出され、筋膜や筋肉に存在するポリモーダル受容器を刺激します。この刺激によって生じた電気信号が神経を通じて脳に伝わることで、痛みとして認識されるのです。

伸筋側に生じた痛みに対して、患部を揉んだり押したりしてもなかなか改善が見られないのは、痛みの原因が屈筋側にあるためです。したがって、痛みを根本的に改善するためには、痛む場所を直接刺激するのではなく、原因となっている拘縮した屈筋を緩めることが重要になります。

屈筋と伸筋のバランスを整えることは、姿勢改善だけでなく、慢性的な痛みの緩和にもつながります。日々の生活の中で、屈筋と伸筋のバランスを意識し、適切なストレッチや運動を行うことが、健康的な身体を維持するために不可欠です。

関連項目

筋肉
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