山スキー

山スキー：自然の斜面を滑るスリルと挑戦

山スキーは、スキーを用いて雪山を滑走するアクティビティです。近年ではバックカントリースキーなどと呼ばれることもありますが、登頂よりも滑走を重視する点が山スキーとは異なります。スノーボードを使用する場合は、山スキーとは呼びません。エクストリームスキーは山スキーの一種と言えるでしょう。

山スキーのスタイル：アルペンとテレマーク

山スキーのスタイルは、大きく分けてアルペンスタイルとテレマークスタイルの2種類があります。両スタイルで使用するスキー板は同じでも、滑走方法は大きく異なり、ブーツやビンディングにも互換性はありません。

アルペンスタイルでは、踵を固定／非固定に切り替えられるAT（アルパインツーリング）ビンディングを使用します。登行時は踵をフリーにし、滑降時は完全に固定することで、ゲレンデスキーと同じ滑走が可能です。長距離移動や急斜面が多い欧州の山岳スキーでは、アルペンスタイルが一般的です。

一方、テレマークスタイルは、靴の爪先だけが固定され、滑降時でも踵が固定されていません。アルペンスタイルに比べて軽量で歩きやすく、緩斜面や上り下りの多いコースに適しています。滑降時は、独特のテレマークターンを用います。

どちらのスタイルも、登行時にはスキー板のソール面にクライミングスキン（シール）を貼り付け、滑りにくくして斜面を登ります。ステップソールを採用した板は、クライミングスキン無しでも登ることが可能ですが、滑走抵抗が増加します。登攀時には、スキー板をザックに括り付けることもあります。

装備：安全第一の徹底した準備

山スキーの装備は、スキー用具以外にも雪山登山と共通するものが多数あります。雪崩ビーコン、ショベル、プローブ、無線機、行動食などは必須です。携帯電話、モバイルバッテリー、予備電池なども用意しておきましょう。冬山遭難に対応した保険への加入も強く推奨されています。

服装はゲレンデ用スキーウェアでは不十分で、防水性・透湿性が高く、体温調節が容易な雪山登山用のウェアが必要です。予備の防寒着、例えばダウンジャケットも用意しておくと安心です。

スキー板は、ゲレンデ用スキー板でも代用可能な場合もありますが、山スキー用の板は深雪や悪雪にも対応できるようフレックスが柔らかく、幅広のセミファットやファットタイプが一般的です。テレマークスキーでは、ステップソール板が緩斜面で重宝されます。

ブーツは、歩行モードとスキーモードを切り替えられ、足首を曲げることができ、底部がゴムソールで軽量であることが特徴です。アルペンスタイルとテレマークスタイルでは互換性がない点に注意が必要です。

クライミングスキンは、アザラシの毛皮を模倣した素材で作られており、登行時にスキー板の裏に貼り付け、後退を防ぎます。現在はモヘヤや合成樹脂製が主流です。

スキーアイゼンは、シールが効かない急斜面で、またはシールと併用して使用します。ビンディングは、登行時には踵を上げ、滑降時には固定する構造になっています。軽量なテックビンディングも人気です。スキーブレーキの有無に関わらず、流れ止め（リーシュコード）の使用が推奨されます。

ストックは、ゲレンデ用のものでも使用できますが、山スキー用は伸縮式で、緊急時にはプローブやテントポールとして使用できるものもあります。

技術：ゲレンデとは異なるスキル

山スキーでは、ゲレンデとは異なる技術が求められます。キックステップは、ツボ足で斜面を登降する方法です。ジャンプターンは、深雪やウィンドパックでターンするための技術です。テレマークターンは、踵を固定しないテレマークビンディング特有のターンです。

コースと危険性：雪山特有のリスク

山スキーはゲレンデとは異なり、雪崩や落石、障害物、ツリーウェル、クレバスなど、様々な危険が潜んでいます。雪崩に巻き込まれた場合は、エアポケットを確保することが重要です。雪崩ビーコンの携行は必須であり、遭難防止のためにも保険加入が強く推奨されています。

山岳スキー競技：オリンピック種目へ

山岳スキーは、登山とスキーを組み合わせた競技としても発展しています。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックで新競技として採用される予定です。種目には、スプリント、インディビジュアル、バーチカル、チーム、混合リレーなどがあります。

山スキーは、自然の雄大さとスリルを味わえる魅力的なアクティビティですが、危険と隣り合わせであることを常に意識し、安全対策を徹底することが不可欠です。十分な準備と知識、技術を身につけて、安全に山スキーを楽しみましょう。

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