山上たつひこ

山上たつひこ：異才を放つ漫画家・小説家の軌跡

山上たつひこ（本名：山上竜彦、1947年12月13日 - ）は、日本の漫画家、小説家です。小説家としては山上龍彦、秋津国宏の名義も用います。徳島県に生まれ、大阪府で育ち、現在は金沢市に在住しています。大阪鉄道高校（現・大産大附属高校）を卒業。彼の作品は、ギャグ、シリアス、社会派など多岐にわたり、日本の漫画界に大きな足跡を残しました。

デビューと初期の作品

出生名は三宅竜彦でしたが、養子に出された後に森田姓となり、その後、母方の旧姓である山上姓を名乗るようになりました。高校卒業後、大阪の日の丸文庫に入社し、編集業務の傍ら貸本劇画を描き始めました。1965年、日の丸文庫「影 別冊」に掲載された『秘密指令0』で正式に漫画家としてデビュー。SFやホラーといったジャンルを手がけました。1968年には芳文社「コミックmagazine」で『第七病棟異常なし』を発表し、雑誌デビューを果たします。

メジャーデビューと代表作

1969年、「週刊少年マガジン」で『二人の救世主』を発表し、メジャーデビューを果たします。翌1970年からは、同誌で初期の代表作となる『光る風』を連載。当時の社会情勢を反映し、軍国主義の台頭と恐怖を描いた内容は、読者に強い衝撃を与え、政治的なサスペンス作品として高い評価を受けました。

1972年からは『喜劇新思想大系』の連載を開始。シリアスな作風から一転し、スラップスティックで過激なギャグは読者を驚かせ、ギャグ漫画の新境地を開拓しました。そして1974年、「週刊少年チャンピオン」で連載開始された『がきデカ』は爆発的なヒットを記録。『がきデカ』は、水島新司の『ドカベン』や鴨川つばめの『マカロニほうれん荘』と並び、「週刊少年チャンピオン」の部数増に貢献し、社会現象を巻き起こしました。

作風の変化と小説家への転向

1980年に『がきデカ』の連載を一旦終了した後、1980年代は作風が変化。『湯の花親子』に代表されるような、平凡な日常生活に潜む不条理や違和感を主題としたギャグ漫画を多く描くようになりました。一方で、『鬼刃流転―孤高の天才剣士柳左近』のような前衛的なギャグ漫画も発表しています。

しかし、漫画表現に限界を感じた山上は、1990年の『がきデカ』完結編の脱稿とともに漫画執筆を休止し、小説家に転向しました。近年では再び漫画執筆への意欲を見せ、2004年には『がきデカ』の続編となる『中春こまわり君』を「ビッグコミック」で発表しています。2014年には、原作者として『羊の木』（作画：いがらしみきお）で第18回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞しました。

逸話

『光る風』のような社会派でシリアスな作品から、『喜劇新思想大系』や『がきデカ』のような型破りな作風への変化から、「山上は当局に捕まり、人格改造を受けた」という噂が流れました。

発表当時は評価されていなかった『がきデカ』が、大ヒットしたことで、むしろ苛立ちや嫌悪を感じていたと語っています。また、小説家への転向は、『光る風』連載時に編集者に無断でネーム（台詞）を書き換えられたことがきっかけだったと言われています。

多岐にわたる作品群

山上の作品は、漫画、小説、エッセイ、テレビドラマ原作と多岐にわたります。その作品リストは膨大であり、彼の才能と創造性の豊かさを物語っています。

山上たつひこの作品は、時代を反映しながらも、常に新しい表現を追求する姿勢が貫かれています。その独創的な世界観は、多くの読者やクリエイターに影響を与え続けています。

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