山下カズ子

山下カズ子（やました カズこ）氏は、1946年12月8日に石川県鹿島郡鹿西町（現在の中能登町）で生まれました。将棋の松下力九段に師事し、日本女子プロ将棋協会（LPSA）に所属する女流棋士です。結婚後の本名は中川カズ子となります。女流棋士制度が発足した初期の6人「一期生」の一人であり、LPSA番号3、以前は日本将棋連盟に所属し、当時の女流棋士番号は旧4でした。2012年に現役を引退しています。

将棋との出会いとレッスンプロ時代

高校卒業後、1965年に上京し様々な職を経験する中で、職場の男性と将棋を指すようになります。ある時、日本橋で開催された将棋まつりの広告で女流アマ名人戦の募集を目にし、同世代で既に女流プロとして活動していた蛸島彰子氏の存在を知ったことが、将棋の道を志すきっかけとなりました。その後、将棋会館の初心者講習会に通い始め、めきめきと上達して有段者の域に達します。

土曜教室を開いていた師匠となる松下力九段から、「会社の給料と同等の額を出すからプロにならないか」と誘われ、熟考の末、1972年に女性として二人目のレッスンプロとして登録されました。「女流プロ1級」の肩書きで活動を開始します。レッスンプロとしての主な仕事は、土曜教室での指導補助や師匠の代わりに指導対局を行う「代稽古」、連盟の棋譜の確認作業、『将棋年鑑』の校正など多岐にわたりました。特に、NHK杯では記録係に抜擢され、1990年まで18年間という長きにわたり、蛸島氏が棋譜を読み上げ、山下氏が記録するという体制で共に番組を支えました。

女流棋士としての歩みと栄光

1974年に女流棋戦が創設されると、山下氏は第一期女流棋士6人のうちの一人としてプロ入りし、女流初段となります。そして、同年10月31日には、関根紀代子氏を相手に、記念すべき女流将棋の最初の公式戦を戦いました。この対局は、日本のプロ将棋史における重要な一歩でした。

女流棋士として本格的に活動を開始した山下氏は、瞬く間に頭角を現します。1977年、第4期女流名人位戦で、当時女流棋界の第一人者であった蛸島彰子氏から名人位を奪取。これにより二人目の女流名人となり、その後第7期まで4期連続で名人位を防衛しました。林葉直子氏が登場するまでの間、蛸島氏と並び称される女流棋界の二強時代を築き上げ、その実力を広く知らしめました。この活躍が認められ、1980年度の第8回将棋大賞では、最優秀女流棋士賞を受賞しています。

また、1981年2月19日には、第12期新人王戦に出場し、棋士の公式戦に女性として初めて参加するという歴史的な一歩を踏み出しました。相手は後にトップ棋士となる高橋道雄氏でしたが、この対局は敗れました。

引退後の活動と新たな道

山下氏は、現役時代から詰将棋の創作活動にも熱心に取り組み、LPSAが発行した『日めくり詰め将棋カレンダー2009』では選考委員長を務めるなど、普及面でも貢献しています。

2007年には、日本女子プロ将棋協会（LPSA）の設立に尽力し、その旗揚げに参加しました。そして、2012年3月31日、女流棋士規程に基づき現役女流棋士としての対局から引退します。翌4月1日からは、LPSAの棋戦に出場するための「ツアー女子プロ」として活動を継続しました。普及活動の場では、引き続き「女流五段」の免状を使用しています。また、アマチュアとして日本将棋連盟主催の公式戦に出場する際は、本名の「中川カズ子」名義を使用しています。

2015年4月には、LPSA公認制度の見直しにより、「LPSAプロ」へと転向しました。

そして、2024年9月1日、引退女流棋士昇段規定の改定により、女流六段への昇段を果たしました。これは、LPSA所属では団体発足時の中井広恵氏（後に退会）、LPSA理事会審議で昇段した蛸島彰子氏に次ぐ3人目の女流六段であり、日本将棋連盟所属女流棋士も含めると、女流棋士制度発足以降6人目の女流六段となります。山下カズ子氏は、女流将棋界の黎明期から現代に至るまで、その発展に大きく貢献してきた棋士の一人として、その功績は語り継がれるでしょう。

昇段履歴
1972年4月0日 - 女流1級（レッスンプロ）
1974年10月31日 - 女流初段（プロ入り）
1977年11月15日 - 女流三段（タイトル1期）
1980年2月8日 - 女流四段（タイトル3期）
1988年11月17日 - 女流五段（特別昇段）
2012年3月31日 - 引退、ツアー女子プロへ転向
2015年4月0日 - LPSAプロへ転向
2024年9月1日 - 女流六段（引退女流棋士昇段規定）

タイトル獲得
女流名人 4期（第4期、第5期、第6期、第7期）

将棋大賞
* 第8回（1980年度）最優秀女流棋士賞

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