松下力

松下力(まつした つとむ)

1913年3月7日生まれ、1987年11月16日没。将棋界に大きな足跡を残した棋士、松下力。土居市太郎名誉名人の門下生として1934年にプロ入りを果たしました。棋士番号は15番。千葉県習志野市出身です。

プロ生活と輝かしい戦績

プロ入り後は数々のタイトルを獲得し、戦時中の1943年には朝日番付戦で優勝。この大会を含め、優勝回数は3回を数えます。[順位戦]]では、第1期からB級に所属。当時の七段であった松下は、升田幸三七段、大山康晴六段といったそうそうたるメンバーと共に順位争いを繰り広げました。第6期[[順位戦]では9勝3敗の好成績で2位となり、A級に昇級、八段に昇段。その後、一度降級するものの、第9期[順位戦]ではB級1組で10勝3敗の成績で1位となり、A級へ復帰を果たします。

全盛期を過ぎた後も、升田幸三や米長邦雄といった強豪棋士相手に勝利を収め、5割前後の勝率を維持するなど、その実力を長く維持しました。しかし、1976年頃から徐々に勝率が下降。1981年3月、現役を引退します。引退後には、その年の第8回将棋大賞で東京記者会賞を受賞。同年11月には九段の段位を贈られました。1987年、心不全のため74歳でこの世を去りました。

日本将棋連盟への貢献

日本将棋連盟理事として、将棋界の発展にも貢献しました。多くの弟子を育成し、棋士や女流棋士を輩出。後進の指導にも力を注ぎました。

独特な棋風

松下力の棋風は、相掛かりを得意とする居飛車党として知られていました。しかし、1970年前後からは中飛車や三間飛車といった振り飛車も多用するようになりました。特に、穴熊戦法の研究・実践においては先駆的な存在であり、加藤治郎名誉九段からは「穴熊戦法の中興の祖」と評されています。

その指し回しは、自陣の整備、攻め、受けのいずれにおいても非常に丁寧で隙がなく、攻めが切れて負けることはほとんどありませんでした。

昇段履歴

1928年：入門
1934年：四段（プロ入り）
1937年：五段
1940年：六段
1944年：七段
1952年：八段（順位戦A級昇級）
1981年：引退
1981年：贈九段（将棋の日表彰）

主な成績と受賞歴

棋戦優勝：朝日番付戦1回、東西対抗勝継戦2回（合計3回）
第8回将棋大賞 東京記者会賞

著書

* 『松下八段将棋教室』（文海堂、1970年）

まとめ

松下力は、戦時中から昭和後期にかけて活躍した名棋士です。数々のタイトル獲得、順位戦での活躍、そして穴熊戦法への貢献は、将棋史に燦然と輝く業績と言えるでしょう。日本将棋連盟理事としての活動や後進の指導、そして丁寧で隙のない棋風も、多くの棋士たちに大きな影響を与え続けました。彼の功績は、これからも将棋界に語り継がれていくことでしょう。

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