山内豊熈

山内豊熈（やまうち とよてる）は、江戸時代後期の土佐藩第13代藩主です。文化12年（1815年）に第12代藩主・山内豊資の長男として誕生しました。幼少の頃から聡明で知られ、儒学者である佐藤一斎に師事し、学問を修めました。

天保14年（1843年）に父の隠居に伴い藩主となりました。藩主となると、自ら藩政改革に乗り出しました。その内容は多岐にわたり、西洋砲術の導入による軍事力の強化、文武の奨励による藩士の能力向上、倹約令による藩財政の再建など、藩の立て直しに尽力しました。また、身分にとらわれない有能な人材の登用を積極的に行い、その一例として馬淵嘉平が挙げられます。馬淵は、藩財政の収支の見直し、専売制の強化、問屋制からの脱却など、旧来の制度からの脱却を目指しました。この改革は、旧体制を維持しようとする保守派からは反発を受けましたが、豊熈は馬淵を厚く信頼し、その改革を支持しました。

しかし、馬淵が当時異端とされていた心学を学んでいたことが保守派から糾弾され、豊熈は苦渋の決断を迫られ、馬淵を処罰せざるを得なくなりました。この事件は、豊熈の藩政改革にとって大きな痛手となりました。さらに、嘉永元年（1848年）には、参勤交代で江戸に赴いた直後に34歳という若さで急逝しました。その結果、豊熈が主導した藩政改革は、志半ばで頓挫することとなりました。

豊熈の死後、藩主の座は弟で養嗣子の山内豊惇が継ぎました。豊熈の改革は結果的に失敗に終わりましたが、その後の土佐藩の歴史に大きな影響を与えたことは間違いありません。彼の目指した改革は、その後の時代にも引き継がれ、明治維新の原動力の一つになったとも言えるでしょう。


系譜
父: 山内豊資（1794年 - 1872年）
母: 美芳院 - 大賀宗文の娘
正室: 候姫（1815年 - 1880年） - 祝姫、智鏡院、島津斉興の次女
男子: 円林院 （1835年）- 夭折
女子: 麟姫 （1840年）- 夭折
側室: 平岡権助の娘、民（1824年 - 1873年）
女子: 鍈姫（1841年 - 1924年）- 酒井忠恕（酒井忠発嫡男）室
女子: 鏸姫（1842年 - 1864年） - 山内容堂養女、稲葉観通室
男子: 政太郎（1843年 - 1844年）
女子: 綱姫（1845年 - 1919年） - 浅野長勲正室
男子: 篤弥太（1847年 - 1848年）
養子:
* 男子: 山内豊惇（1824年 - 1848年）- 山内豊資の四男

もう一度検索