山口シヅエ

山口シヅエ（やまぐち しづえ、1917年 - 2012年）は、日本の政界で長く活躍した女性政治家です。衆議院議員として通算13回当選を果たし、日本社会党と自由民主党という異なる政党で活動しました。その明るく華やかな雰囲気から「下町の太陽」と親しまれました。本名は静江です。

生い立ちと政界への道

1917年10月31日、東京都中央区日本橋小伝馬町の商家の長女として生まれました。実家は「山口自転車」を経営しており、父の山口重彦も後に参議院議員となる人物でした。東京府立第七高等女学校（現在の東京都立小松川高等学校）を卒業後、家業に従事し、従業員の食事を担当する「炊事部長」として働きました。

政界に進むきっかけとなったのは、第二次世界大戦で弟を亡くした経験です。戦争の悲惨さを目の当たりにし、「二度と戦争を起こしてはならない」という強い思いから、国政への参加を決意しました。キリスト教社会運動家の賀川豊彦の支援を受け、1946年の第22回衆議院議員総選挙に日本社会党の公認候補として東京都第1区から立候補し、当選しました。この選挙で誕生した39名の女性代議士の一人であり、日本の国会における女性進出の先駆けとなりました。議員としては、特に売春防止法の制定に力を尽くしました。

政党の転換と活動

長年所属した日本社会党を離れることになったのは、1967年1月の第31回総選挙後の出来事が発端でした。党内の派閥争いに巻き込まれる形で選挙違反の嫌疑をかけられましたが、最終的には不起訴処分となりました。しかし、この一件で党への不信感を抱き、同年5月に社会党を離党し、しばらく無所属で活動しました。その後、同年9月には自由民主党へ入党し、大きな話題を呼びました。

自民党では、福田赳夫の派閥に加わりました。当時、福田が党幹事長を務めていたこともあり、山口シヅエは頻繁に幹事長室を訪れていたと言われています。その際、党本部の朝早くから議員たちが集まって活発に勉強会を行っている様子を見て感銘を受け、「自民党に入って驚いたのは、本部で朝8時には様々な会議が開かれ、議員が勉強していること。もっと国民に知ってもらうべきだ」と語ったと伝えられています。

自民党公認候補として臨んだ1969年の第32回総選挙で再び当選しました。この選挙では、後に日本共産党の幹部となる不破哲三が初めて当選し、一方、社会党の現職候補は落選するという結果でした。

女性議員としての軌跡と引退

1971年に、同じく初の女性代議士であった社会党の戸叶里子が現職のまま死去したことで、山口シヅエは「初の女性代議士の中で最後に現職を務める者」となりました。しかし、1972年の第33回総選挙では惜しくも次点で落選します。

1976年の第34回総選挙で再び衆議院議員に返り咲き、この時期、自民党内では唯一の女性代議士となりました。1970年代後半には、全日本女子格闘技連盟の初代コミッショナーとして、女子キックボクシングやボクシングのタイトル認定にも関わりました。また、経済企画政務次官などの要職も経験しました。

1980年の総選挙と続く1983年の総選挙で連続して落選し、政界から引退しました。その政治家人生における当選回数は通算13回に上ります。政界引退後も、1980年には女性として世界で初めて国連平和賞を受賞するなど、国内外で評価を受けました。1987年には勲一等瑞宝章を受章しています。

晩年と死去

晩年は「山口シヅエガーデン」の代表取締役を務めていました。

2012年4月3日、腎不全のため94歳で永眠しました。死去の事実は、運営する会社が「故人の遺志により、誕生日の10月31日まで公表を控える」としたため、しばらく伏せられていました。

著作

* 『骨のある子に育てよう:日本食こそ健康食 お母さんは台所の薬剤師』山口ガーデン、1986年。

山口シヅエは、戦後日本の政治史において、女性政治家の道を切り拓いた重要な人物の一人として記憶されています。

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