山口千代作

山口千代作：激動の明治を駆け抜けた政治家・実業家

山口千代作は、嘉永元年（1848年）に陸奥国河沼郡森野村（現在の福島県耶麻郡西会津町）で、庄屋の家に生まれました。幼くして父を亡くし、13歳で家督を継ぎ里正となりました。漢学を渡部思斎に学び、学問にも励みました。

自由民権運動への参加と政治活動

明治維新後、1872年（明治5年）に森野村の戸長に就任し、地域行政に携わりました。1878年（明治11年）には、喜多方における民権運動「愛身社」の創立に発起人として参加し、自由民権運動に身を投じます。1880年（明治13年）の第4回愛国社大会には、会津地域から唯一の参加者として名を連ねました。その後、福島県会議員に選出され、副議長を経て、1881年（明治14年）には議長に就任しました。河野広中らと共に自由党福島部の創設に尽力し、『福島自由新聞』の創刊にも関わっています。

1882年（明治15年）には、県会で三島通庸県令を批判し、会津三方道路工事に反対する運動を展開しました。この際、宮城控訴院への提訴委員として活動中に福島事件が発生。東京へ逃れるも、国事犯として逮捕されました。しかし、1883年（明治16年）に高等法院で無罪となり釈放されました。その後、官吏侮辱罪で欠席裁判により重禁固1年、罰金20円の有罪判決を受け、逃亡生活を送ります。3年ほど経て帰郷し、服役しました。

衆議院議員としての活動

自由党再興のために結成された会津協会の支援を受け、1890年（明治23年）7月の第1回衆議院議員総選挙に福島県第四区から立憲自由党所属で出馬し、見事当選を果たしました。しかし、その後、吏党の大成会へ転じます。第2回、第3回総選挙でも当選し、衆議院議員を連続3期務めました。

実業家としての挑戦と晩年

政治家としての活動と並行して、実業家としても活動しました。1897年（明治30年）5月には、尾野本村と若松町に製糸場を開設。1900年（明治33年）5月には、福島県絹織物組合長に就任しました。しかし、事業は失敗し、多額の負債を抱えることになります。再起を期して北海道に渡り、江差機業会社に招かれ、空知支庁空知郡、後の三笠山村（現在の三笠市）に居を定めました。

1903年（明治36年）4月には北海道庁嘱託として蚕糸事業を担当し、1904年（明治37年）3月には篠路郵便局長に就任。1905年（明治38年）5月には、北海道選出代議士の東武らと北洋貿易商会を設立し、新たな事業展開を模索しました。1906年（明治39年）には樺太での事業を計画しましたが、脳出血により三笠山村で死去しました。

山口千代作は、激動の明治時代を、政治家として、また実業家として駆け抜けました。自由民権運動に身を投じ、県会議員、衆議院議員として活躍する一方、実業家としては苦難を経験しました。その波乱に満ちた生涯は、明治という時代の大きなうねりを象徴していると言えるでしょう。

もう一度検索