山口県文書館

山口県文書館：日本の公文書館の先駆け

山口県文書館は、1959年（昭和34年）に開館した、日本で最初の公文書館です。山口県山口市後河原に位置し、山口県立山口図書館内に併設されています。約44万点もの史料を所蔵する同館は、特に長州藩の歴史研究において重要な役割を担っています。

貴重な史料の宝庫

同館の所蔵品は多岐に渡り、その中には長州藩ゆかりの貴重な資料が数多く含まれています。例えば、毛利家文書、徳山毛利家文庫、大村益次郎文書など、藩政期の政治、経済、社会、文化を深く理解する上で不可欠な史料が保管されています。また、国司家文書や周布家文書といった、藩政に関わった有力家系の資料も充実しています。

これらの史料に加え、絵画資料も注目に値します。『芸州厳島御一戦之図』は厳島の戦いを描いた貴重な絵図であり、歴史絵画研究においても重要な資料となっています。さらに、吉田松陰の処刑直前の遺墨『吉田松陰絶筆』も収蔵されており、幕末期の動乱期を象徴する史料として高く評価されています。鎌倉時代末期の『長門国正吉郷入江塩浜絵図』は、当時の地理や社会状況を知る上で貴重な資料です。

創設の経緯と発展

山口県文書館の設立には、戦前から県立図書館に保管されていた山口県庁の行政文書や古[[文書]]の存在が大きく関わっています。1952年、旧長州藩主毛利家から約5万点の藩政文書が県に寄託されたことをきっかけに、当時の県立図書館長、鈴木賢祐氏は、これらの史料を有効活用する必要性を感じました。欧米の公文書館（アーカイブス）のシステムに着目し、積極的な働きかけの結果、1959年、日本初の公文書館として山口県文書館が開設されました。

「文書館」という名称には、古[[文書]]と現代の行政文書をつなぐという理念が込められています。設立後は、長州藩史研究の基礎となる『防長風土注進案』や『萩藩閥閲録』の復刻刊行事業を積極的に展開し、地域の歴史研究に貢献してきました。また、県内各地の古[[文書]]や行政文書の収集にも力を入れ、資料の充実を図っています。

1964年には、国立史料センター構想に対して地方分散型の公文書館設置を訴え、全国的な公文書館設置運動を牽引しました。その活動は、埼玉県などにおける公文書館設置の促進に繋がるなど、日本の公文書館制度の発展に大きく貢献しました。1973年には県立図書館と共に新館に移転し、近年では学校教育や古[[文書]]学習への支援にも積極的に取り組んでいます。

施設概要と所蔵文化財

山口県文書館は、山口県立山口図書館と併設されており、地上3階、地下1階建ての建物です。文書館の面積は1,232㎡で、書庫は地下2層に渡っています。

同館では、多くの貴重な資料が国指定の重要文化財として登録されています。有光家文書、長門国正吉郷入江塩浜絵図、大内版法華経板木など、歴史的価値の高い資料が多数保管されています。また、山口県庁や郡役所の行政文書も重要文化財に指定されており、行政史研究においても重要な役割を果たしています。さらに、熊谷家文書、日明貿易船旗、高洲家文書、能島村上家文書など、寄託された重要文化財も数多く所蔵しています。

山口県文書館は、歴史資料の保存・公開を通じて、地域社会の発展に貢献し続けています。今後も、貴重な史料の収集と研究、そしてその成果の社会への還元を積極的に行っていくことが期待されています。

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