厳島の戦い

厳島の戦い（いつくしまのたたかい）は、1555年（天文24年）に安芸国（現在の広島県西部）の厳島で行われた、毛利元就と陶晴賢による合戦です。この戦いは、中国地方の覇権を争う両勢力の命運を分ける重要な戦いとなりました。

背景

大寧寺の変

1551年（天文20年）、陶隆房（後の晴賢）は大内義隆を討ち、大内氏の実権を握りました。その後、大内義長を擁立しますが、このクーデターにより大内氏は混乱期に入ります。

吉見氏の挙兵と三本松城の戦い

大内氏の支配下にあった石見国の吉見正頼が陶氏打倒を掲げて挙兵しました。1554年（天文23年）3月、三本松城の戦いが勃発し、陶軍は毛利元就にも参陣を要請しました。しかし、元就は陶氏との対決を決意します。

防芸引分

1554年5月、毛利元就は陶氏と決別し、桜尾城など複数の城を攻略して厳島を占領しました。毛利氏は厳島や広島湾周辺の守りを固め、陶氏との決戦に備えました。同年5月には周防国に侵攻し、陶軍と交戦しています。

折敷畑の戦い

陶晴賢は宮川房頼を安芸国に派遣しましたが、1554年6月、折敷畑の戦いで毛利軍に敗北しました。この戦いで宮川房頼は戦死し、陶軍は初戦で大きな痛手を負いました。

周防国での攻防

折敷畑の戦い後、毛利軍は佐西郡の山里に侵攻しましたが、陶方の抵抗に遭い苦戦しました。一方、海戦では毛利水軍が陶氏の本拠地を襲撃し、陶軍も厳島を攻めましたが、毛利軍の守りで上陸を阻止されました。その後、呉・能美の警固衆が陶氏に離反しましたが、毛利軍が鎮圧し能美島を占領しました。三本松城の戦いが一段落すると、陶晴賢は毛利氏対策に本腰を入れ始めました。

合戦の経緯

外交と調略

尼子氏への対応

陶晴賢は尼子氏との連携を模索しましたが、尼子氏の内紛により実現しませんでした。毛利元就は尼子氏と対立する勢力を支援し、尼子氏を牽制しました。

少弐冬尚への密書

毛利元就は、大内氏に領地を奪われた九州の少弐冬尚に密書を送り、陶氏への牽制を促しました。

その他の内応者

毛利元就の調略により、陶方の武将が毛利方に寝返りました。一方、毛利方からも離反者が出ましたが、すぐに鎮圧されました。

前哨戦

1555年正月、陶軍は毛利軍の拠点を襲撃しましたが、毛利軍に撃退されました。3月には、陶氏の重臣である江良房栄が安芸国を襲撃した後、陶晴賢に誅殺されました。4月には、江良房栄を頼っていた神領衆が厳島に来襲し、小規模な戦闘が起こりました。その後、毛利軍は野間隆実を攻め、降伏させました。5月には陶水軍が厳島を攻撃しましたが、毛利軍が撃退しました。6月、毛利元就は厳島を視察し、守りを強化しました。7月には、白井賢胤が宮尾城を攻めましたが、毛利軍に撃退されました。

本戦

両軍の出陣

9月21日、陶晴賢は2万以上の大軍を率いて厳島へ出陣しました。陶軍は厳島に上陸し、宮尾城を包囲しました。一方、毛利軍は佐東銀山城を出陣し、草津城に着陣しました。毛利軍は、吉川元春、小早川隆景などの有力武将と、安芸の国人衆が加わり、水軍も集結させました。

合戦直前

9月28日、毛利軍は地御前に前進し、村上[[水軍]]が毛利軍に加勢しました。毛利軍は、毛利本隊、小早川隊、村上[[水軍]]の3軍に分かれて厳島へ渡海する準備をしました。9月30日、暴風雨の中、毛利軍は厳島に上陸しました。

合戦当日

10月1日、毛利軍は奇襲攻撃を開始しました。毛利軍は陶軍の背後から攻撃し、小早川隊も陶本陣を攻めました。村上[[水軍]]は陶水軍を攻撃し、焼き払いました。陶軍は混乱し、総崩れとなりました。陶晴賢は脱出を試みましたが、最終的に自害しました。弘中隆包などの陶軍の武将も討ち死にしました。毛利軍は陶軍を壊滅させ、戦いは終結しました。

戦後処理

毛利軍は敗残兵を掃討し、陶晴賢の首を検分しました。元就は晴賢の首を鞭で打ち、その死を悼みました。厳島での戦闘後、島全体を清め、死者を弔いました。

戦後

この戦いで陶氏を失った大内氏は急速に弱体化しました。毛利氏は大内氏の旧領を併合し、中国地方の大名として勢力を拡大しました。また、この戦いを経て毛利水軍は大きな力を持ち、後の戦いでも活躍しました。

各勢力の兵力と参戦・関連した人物

毛利軍

毛利軍の兵力は4000程度とされていますが、実際はもっと多かったと考えられています。吉川氏、小早川氏、熊谷氏などの安芸国人も参戦しました。毛利水軍は50～60艘、小早川水軍は60～70艘でした。

陶軍

陶軍は2万～3万とされていましたが、実際は1万に満たなかったと考えられています。陶氏の家臣や周防国の武士、神領衆が参加しました。陶水軍は500～600艘でした。

村上[[水軍]]

村上[[水軍]]は200～300艘で毛利軍に加勢しました。来島村上氏が参戦したことが明示されていますが、能島村上氏は参戦していなかったとする説もあります。

検証

史料

信頼性の高い史料として、『棚守房顕覚書』があります。また、江戸時代に作成された『武家万代記』や『万代記』などの史料もあります。一方、『陰徳太平記』は史料的価値が低いとされています。

陶軍の厳島誘因（宮尾城囮城）説

宮尾城は陶軍を誘い込むための囮として築かれたという説がありますが、実際には以前から存在しており、戦前に改築されたに過ぎません。元就が陶軍を誘引したという話は創作と見られています。

江良房栄の内応説

江良房栄が毛利氏に内応していたという説がありますが、これは誤りであると考えられています。

来島水軍との婚姻

毛利氏が来島水軍と婚姻関係を結んだという説がありますが、婚姻相手は河野通宣だったとする説が有力です。

桂元澄の偽装内通

桂元澄が陶方への内通を偽装したという話がありますが、真偽は不明です。

兵力差

従来は毛利軍が兵力で劣っていたとされていましたが、実際にはそれほど差がなかったという意見も出ています。

合戦の主導者の論議

山室恭子は、厳島の戦いは村上[[水軍]]の勝利であると主張しましたが、秋山伸隆はそれを批判しました。

脚注

注釈

出典

参考文献

史料

論文・書籍

関連項目

外部リンク

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