山宝鉱山

山宝鉱山：多様な鉱物を産出したスカルン鉱床

岡山県高梁市備中町用瀬に位置する山宝鉱山は、かつて盛んに鉱業が行われていた鉱山です。花崗岩と石灰岩が接触して変成作用を受けたスカルン鉱床であり、様々な鉱物を産出することで知られています。

鉱物と採掘の歴史

山宝鉱山では、主に磁鉄鉱を採掘していました。しかし、黄銅鉱などの他のスカルン鉱物も産出していました。磁鉄鉱の採掘は1970年頃まで続けられていましたが、その後閉山しました。鉱山で産出された鉱物には、磁鉄鉱、黄銅鉱の他に、磁硫鉄鉱、硫砒鉄鉱、蛍石、方解石、灰鉄柘榴石、灰鉄輝石、ヘスティング閃石などがあります。

特に注目すべきは、1976年に新鉱物として承認されたソーダ魚眼石です。この発見は、山宝鉱山の地質学的価値を世界的に高めることとなりました。現在では、ソーダ魚眼石は希少な鉱物コレクターアイテムとして、高い価値を持つようになっています。

現在の状況と周辺環境

山宝鉱山は閉山しましたが、1973年からは株式会社カルファインによって生石灰の製造が行われています。鉱山跡地は、新たな産業活動の場として活用されています。また、山宝鉱山周辺には藤井鉱物化石館があり、鉱物や化石に興味のある人にとって魅力的な観光地となっています。この博物館は、山宝鉱山で発見された鉱物標本なども展示しており、地域の地質や歴史を知る上で貴重な資料を提供しています。

地質学的意義

山宝鉱山は、スカルン鉱床の形成過程や鉱物生成に関する研究において、重要な役割を果たしてきました。多様な鉱物組成と、新鉱物の発見は、地質学者や鉱物学者にとって貴重な研究対象となっています。山宝鉱山の地質調査は、日本の地質学の発展に貢献しただけでなく、世界的な鉱物学研究にも影響を与えました。

参考文献

山宝鉱山に関する研究成果は、様々な学術論文や書籍に掲載されています。以下に、主要な参考文献を列挙します。

光野千春・沼野忠之監修、野瀬重人編『岡山県地学のガイド : 岡山県の地質とそのおいたち』コロナ社〈地学のガイドシリーズ〉、1980年
沼野忠之『岡山の鉱物』日本文教出版〈岡山文庫〉、1980年
光野千春ほか解説 著、山陽新聞社出版局編 編『岡山の地学』山陽新聞社〈原色図鑑〉、1982年
日本の地質「中国地方」編集委員会編『中国地方』共立出版〈日本の地質〉、1987年
Matsueda, Hiroharu; et al. (1981). “Natroapophyllite, a new orthorhombic sodium analog of apophyllite I. Description, occurrence, and nomenclature” (PDF). American Mineralogist 66: 410-415.
Miura, Yasunori; et al. (1981). “Natroapophyllite, a new orthorhombic sodium analog of apophyllite II. Crystal Structure” (PDF). American Mineralogist 66: 416-423.

これらの文献は、山宝鉱山の地質、鉱物、採掘の歴史などについて、詳細な情報を提供しています。これらの研究成果は、山宝鉱山を理解する上で不可欠な情報源です。

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