灰鉄柘榴石

灰鉄柘榴石（Andradite）

灰鉄柘榴石（かいてつざくろいし、英名：Andradite）は、ケイ酸塩鉱物の一種で、特にカルシウムと鉄を豊富に含んだ鉱物です。その化学式はCa3Fe3+2(SiO4)3で、結晶系は等軸晶系に分類されます。この鉱物は、柘榴石のグループの中でも非常に稀有なものであり、特に蛇紋岩をはじめとした超塩基性岩中に見られます。また、スカルン鉱床においても灰鉄柘榴石と灰礬柘榴石と共に産出されることがあります。

特徴と変種

灰鉄柘榴石の中には、特殊な変種も存在します。例えば、黒い変種のメラナイト（Melanite）は、チタンを含むために独特の色合いを持っています。このメラナイトは、同じくチタンを含む黒色のチタン柘榴石（ショーロマイト）と非常に似ており、肉眼では区別が難しく、科学的な分析が必要とされています。

さらに、灰鉄柘榴石にはラメラ構造を持つものもあり、特に表面に虹色の光沢が現れるレインボーガーネットとして知られています。メキシコのソノラ州で発見されたものは、灰鉄柘榴石の層と灰礬柘榴石の層が交互に重なって形成されており、独特な美しさを誇っています。また、日本国内でも純粋な灰鉄柘榴石に近いレインボーガーネットが発見されています。

このように、灰鉄柘榴石は灰礬柘榴石との固溶体を形成することもあり、特にマリでの産出例が多いことから、通称マリガーネットとも呼ばれています。

宝石としての利用

灰鉄柘榴石は、その高い透明度や美しい色彩から、宝石としても重宝されています。ダイヤモンドに匹敵する光の屈折率を持ち、特にダイヤモンドを上回る分散値により、強烈な輝きを持つことが特徴です。また、高品質の灰鉄柘榴石は、特に美しい宝石として市場で高価に取引されることがあります。

中でも、クロムを含む緑色の変種が特に人気が高く、デマントイド（Demantoid）と呼ばれています。この名前は、光の屈折率の高さからダイヤモンドによく似ていることに由来しています。また、黄色味を帯びた変種はトパゾライト（Topazolite）と呼ばれ、トパーズに例えられることが多いです。

ロシアのウラル地方やイタリアのロンバルディア州などから産出される灰鉄柘榴石には、しばしば石綿のインクルージョンが見られることがあり、この繊維状の成分は「ホーステール」と呼ばれています。これらのインクルージョンは、透明度や輝きを妨げない美しい形状を持つことから、宝石としての価値を高める要因となっています。一方で、大量に含有されると、一般的な宝石の基準に満たずに価値が下がることもあります。

ナミビアやマダガスカルのスカルン鉱床からのものにはホーステールが見られないため、灰鉄柘榴石の産出地によって特徴が異なることも面白い点です。これらの特性を持つ灰鉄柘榴石は、鉱物愛好家や宝石コレクターにとって、魅力的な対象となっています。

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