山崎勲

山崎勲（やまざき いさお）

山崎勲は、1928年7月28日に生まれ、2022年4月25日に生涯を閉じた日本の競輪選手であり、慈善家としても知られています。高知県香美市出身で、選手登録番号は5160、日本競輪学校創設前の期前選手でした。長男の山崎正一も元競輪選手という、競輪一家でした。

競輪選手としてのキャリア

高校時代に自転車屋で住み込みで働いていた山崎は、1950年に高知競輪場が開設されたことをきっかけに、同年7月25日に選手登録しました。当初は生活費と学費を稼ぐ目的でしたが、1952年には最高位のA級1班に昇格し、1953年の全国争覇競輪（現在の日本選手権競輪）決勝では2着に入賞するなど、一線級の実力を発揮しました。捲りや先行を主体とした戦法で観客を魅了し、その後も選手として活躍を続けました。

選手としてのピークを過ぎた頃、次男の病気をきっかけに福祉活動の必要性を痛感した山崎は、自身の賞金を福祉活動の資金とするため、競輪選手としての活動を継続しました。1986年4月29日に引退するまで、36年間で3195戦674勝という輝かしい成績を残し、同年の5月7日に選手登録を消除しました。

福祉活動への転身

1963年に生まれた次男が脳性麻痺を患ったことが、山崎の人生を大きく変えました。治療のため各地の医療機関を巡る中で、同じ境遇の人々が安心して暮らせる環境を整えたいという思いが強くなり、1965年に全国重症心身障害児（者）を守る会高知支部を結成しました。そして、自ら「希望の家」と名付けた施設を開設し、次男を含む数人の障害児を受け入れました。施設の運営は、競輪で得た賞金で賄っていました。

次男の早世という悲しみを乗り越え、山崎はより大規模な障害児施設の建設を決意します。NHKのドキュメンタリー番組『ある人生』で彼の活動が放送されたことをきっかけに、全国から多くの支援が寄せられるようになりました。日本自転車振興会からの補助金も得て、1970年には重度障害児施設『土佐・希望の家』を南国市に開設しました。土地の購入資金は寄付金と自らの賞金で、建設資金は日本自転車振興会や自治体からの補助金で賄われました。運営は自身が立ち上げた福祉団体に委任しました。

山崎の障害児福祉への貢献は高く評価され、1971年には吉川英治文化賞を受賞しました。また、同年末にはNHK紅白歌合戦に審査員として出演し、競輪選手の枠を超えた活動が広く認知されるようになりました。

『土佐・希望の家』の運営が安定した後も、山崎は障害児向けの通院施設設立など、福祉活動に尽力しました。1983年に『土佐・希望の家』運営団体の理事長に就任し、1986年の競輪選手引退後は、福祉活動に専念しました。2002年に理事長を退任した後も、顧問として活動を続け、2009年現在もその活動は続いています。高知競輪場では、山崎の功績を讃え、引退直後から『山崎勲杯』が毎年開催されています。

参考資料

山崎勲著・高知新聞社編『愛と銀輪』社会福祉法人高知心身障害児・者福祉協会 1986年
『競輪三十年史』日本自転車振興会
砂田弘・林夏介『ペダルに希望を乗せて 障害をもつ子どもたちのためにはしる競輪選手』PHP研究所 1985年
四方洋『「いのち」の開拓者 福祉現場の人間の記録』共同通信社 1998年 ISBN 4764104091
名越眞之『品格ある日本人 私たちはどのように行動すれば美しいか』PHP研究所 2007年 ISBN 4569696406
NHK『ある人生』1968年
NHK『ふるさとネットワーク ジャンが聞こえる ある競輪選手の30年』1984年

外部リンク

社会福祉法人土佐希望の家 - 重度心身障害児施設 土佐希望の家


山崎勲の生涯は、競輪選手としての成功と、社会福祉への貢献という二つの側面から、多くの人々に勇気と感動を与え続けています。

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