山崎種二

山崎種二：相場師から教育者、そして美術コレクターへ

山崎種二（1893-1983）は、20世紀日本の経済界に多大な影響を与えた稀有な人物です。相場師、実業家、教育者という多様な顔を持ち、その生涯は波乱に満ちた成功物語として知られています。

相場で名を馳せた「売りの山種」

1920年代から米相場に参入した山崎は、卓越した洞察力と大胆な戦略で成功を収めます。特に売り方に特化し、「売りの山種」として名を馳せました。米穀配給統制法による米穀商品取引所の廃止を機に株式相場へと転身。上昇相場の中で売り方に回り、一時経営危機に陥るも、二・二六事件による相場暴落を巧みに利用し、巨額の利益を上げました。戦後も「売りの山種」として活躍し、山種証券（現SMBC日興証券）を創業するなど、経済界に大きな足跡を残しました。

多様な事業と教育への貢献

山崎の事業活動は多岐に渡ります。山種証券の他、山種物産（のちアサヒトラスト）やヤマタネといった企業を設立し、経営手腕を発揮しました。また、教育にも熱心に取り組み、財団法人山崎学園（現学校法人山崎学園 富士見中学高等学校）を設立。深井鑑一郎を校長に迎え、質の高い教育を提供しました。彼の座右の銘である「信は万事の本を為す」は、ヤマタネグループの企業理念や富士見中学高等学校の教育目標にも掲げられ、その精神は今も受け継がれています。

近代日本画の収集家としての顔

山崎は、近代日本画の熱心な収集家としても知られています。横山大観らと親交を深め、そのコレクションを基に山種美術館を設立。贋作の心配が少ないこと、値上がりする可能性が高いことを理由に近代日本画を選んだという逸話は、彼の鋭い洞察力を示しています。山種美術館は、現代日本画を専門とする美術館として、日本の美術文化に貢献しています。

華麗なる一族と広がるネットワーク

山崎家には、多くの著名人が含まれます。次男の山崎富治は実業家として活躍し、味の素創業家・鈴木家と縁戚関係にあります。長女の夫は今井善衛（元通産事務次官）、二女の夫は住田正二（元運輸事務次官、JR東日本初代社長）というように、政財界に広がる人脈を持っていました。孫である山崎元裕はヤマタネの社長を務めています。さらに、福田赳夫元首相の妻は山崎夫人の従姉妹であり、越智隆雄や千野志麻など、各界の著名人と複雑な親族関係を築いていたことがわかります。

まとめ：多様な才能と影響力

山崎種二の生涯は、相場師としての成功にとどまらず、実業家、教育者、美術コレクターとして多様な才能を発揮した物語です。彼の鋭い洞察力、大胆な決断力、そして「信」を重んじる経営哲学は、現代にも通じる多くの示唆を与えてくれます。彼の功績は、企業経営、教育、そして美術文化という、多方面にわたって日本の発展に貢献したと言えるでしょう。彼の自伝『そろばん』や、彼をモデルにした城山三郎の小説『百戦百勝 働き一両・考え五両』などを通して、その波瀾万丈の生涯をより深く知ることができるでしょう。

もう一度検索