山川ワタル

山川ワタル：国民的スターから消息不明へ至る波瀾万丈の人生

山川ワタル（やまかわわたる、1947年7月30日-）は、1960年代に一世を風靡した日本の元子役、俳優である。東京都武蔵野市出身。本名は沓名信夫（くつな のぶお）。彼の名は、国民的な人気を博したテレビドラマ『少年ケニヤ』（1961年-1962年、NET/東映）の主演、ワタル役を通して、多くの視聴者の記憶に刻まれている。

14歳にして1800人もの応募者の中から選ばれた『少年ケニヤ』の主役オーディション。当初は彫刻家を目指していた山川にとって、芸能界入りは全く想定外のことだった。兄の勧めで応募を決意したものの、彼の動機は「ちょっとだけテレビに出るのも面白そうだし、周りのみんなも（好きな）“あの娘”も注目してくれるかも」という軽い気持ちだったという。しかし、見事主役を獲得した彼は「これでアフリカに行ける！」と大喜びした。実際には、撮影は主に日本のオープンセットや、神奈川県真鶴町、箱根、東京都杉並区久我山などで行われた。

山川という芸名は、『少年ケニヤ』の原作者である山川惣治氏と、劇中での役名ワタルを組み合わせたもの。彼の芸能界での活動は、まさにこの作品から始まったと言えるだろう。

高校は盈進高等学校（現・東野高等学校）に進学。高校2年生だった1964年には、東京オリンピックの聖火ランナーとして、武蔵野市役所から武蔵野八幡宮までの2.2kmを走ったという栄誉にも輝いている。

芸能界を引退後は、吉祥寺の実家の骨董店を継ぎ、プレイガイドの代表も務めていた。女優である妻との間に2児をもうけていることも分かっている。

しかし、2013年に発売された書籍『'60年代 蘇る昭和特撮ヒーロー』では、連絡先不明とされ、それ以降の消息は明らかになっていない。

山川の少年時代は、陸上競技と水泳に長けており、トマトとサクランボを好物としていた。また、当時人気を博していたアメリカドラマ『逃亡者』の主演俳優デビッド・ジャンセンの大ファンだったというエピソードも残されている。

『少年ケニヤ』以外にも、山川は数多くのテレビドラマや映画に出演している。『お嫁さん』（1966年、フジテレビ）、『銭形平次』（1967年、フジテレビ/東映）、『ローンウルフ 一匹狼』（1968年、日本テレビ/東映）、『若草物語』（1968年）、『チャコとケンちゃん』（1968年、TBS/国際放映）、『喧嘩太郎』（1968年-1969年）、『新婚さん旧婚さん』（1969年）などのテレビドラマや、『俺たちの恋』（1965年）、『黄金バット』（1966年）、『雪の喪章』（1967年）、『恋人と呼んでみたい』（1968年）などの映画作品に出演し、幅広く活躍した。

一時代を築いた人気子役から、骨董店経営者、そして消息不明へと続く山川ワタルの人生は、多くの謎と魅力に満ち溢れている。彼の軌跡は、1960年代の日本を彩った一人のスターの物語として、そして、昭和から平成、令和へと続く時代の流れを象徴する出来事として、これからも人々の記憶に刻み込まれ続けるだろう。彼の現在の消息が明らかになることを願いつつ、彼の残した作品を通して、その輝かしい活躍を偲ぶことができるだろう。

もう一度検索