山川惣治

山川惣治：絵物語作家としての生涯と作品

山川惣治（1908年2月28日 - 1992年12月17日）は、昭和20年代から30年代にかけて、絵物語作家として一世を風靡しました。福島県郡山市に生まれ、戦前から紙芝居作家として活動を始め、戦後には絵物語作家として数々の作品を発表し、子供たちに夢と希望を与えました。

紙芝居作家としての出発点

山川惣治は昭和6年より紙芝居の制作を開始し、翌年には『少年タイガー』が大ヒット。それまで紙芝居界のトップであった『黄金バット』を凌ぐ人気を博しました。『少年タイガー』に登場する敵役、ブラック・サタンは、大きな翼と黒ずくめのマスク姿が特徴で、後のバットマン（1939年登場）に類似しているという指摘もあります。ブラック・サタンの登場は1932年であり、バットマンよりも7年早いものでした。

1939年、山川は文部省主催の日本紙芝居コンクールで一等入選を果たし、その才能が「少年倶楽部」編集長の目に留まります。以降、同誌に「誌上紙芝居」として、1939年7月号から1942年1月号まで短編の絵物語を多数執筆しました。これらの作品は戦記物や偉人伝が多く、内務省による児童出版統制（1938年）下において、漫画に代わる視覚的な物語として重要な役割を果たしました。

絵物語作家としての成功

終戦直後の1945年、山川惣治が制作した紙芝居『少年王者』が、小学館の相賀徹夫の目に留まりました。1947年、集英社から絵物語として単行本で描き下ろされた『少年王者』は大ヒットとなり、集英社はこれを機に漫画出版社としての地位を確立。『少年王者』を看板作品として月刊誌『おもしろブック』を創刊しました。山川惣治は、小松崎茂や福島鉄次らと共に、戦後1950年代前半の月刊少年雑誌の絵物語ブームを牽引する存在として活躍しました。

1949年からは『漫画少年』で『ノックアウトQ』を連載。この作品は、山川の少年時代の親友であったボクサー木村久をモデルにしており、梶原一騎が少年時代に感化院でこの作品を読んで感動したことが、後にボクシング漫画『あしたのジョー』の原作を引き受けるきっかけになったと言われています。

特に、1951年から産業経済新聞（産経新聞）で連載された『少年ケニヤ』は、社会現象を巻き起こすほどの人気を博し、後に漫画、ラジオドラマ、テレビドラマ、アニメ、映画など、様々なメディアで展開されました。

1954年には、長者番付の画家部門で1位を獲得するほどの成功を収めましたが、1950年代後半になると、コマ割り漫画の人気に押され、絵物語の人気は徐々に衰退していきました。

晩年と再評価

絵物語の復権を夢見た山川は、1967年にタイガー書房を設立し、絵物語雑誌『ワイルド』を創刊しますが、1968年に廃刊。タイガー書房も倒産し、財産を失ってしまいます。その後は第一線を退き、横浜市根岸でレストラン「ドルフィン」を経営。このドルフィンは、荒井由実（松任谷由実）が女子高生時代に通い、初期の名曲「海を見ていた午後」に歌われた場所として知られています。

1982年に手形詐欺に遭い、「ドルフィン」は破産。一家は離散し、苦しい生活を送る中、山川の窮状を知った角川春樹の尽力により、角川書店から復刻版文庫が刊行され、映画化もされるなど、メディアミックスが展開されました。また、新創刊された月刊誌「小説王」にて、15年ぶりの新作「十三妹」を連載しました。

1984年には、角川書店が『少年ケニヤ』をアニメ映画化。山川自身も実写部分に出演しました。1992年12月17日、心不全のため死去。享年84歳でした。

主な作品

山川惣治は生涯にわたり、数多くの絵物語作品を世に送り出しました。

『少年王者』
『少年ケニヤ』
『ノックアウトQ』
『荒野の少年』
* 『西遊記』

これらの作品は、子供たちの冒険心や正義感を育み、世代を超えて愛され続けています。

山川惣治は、絵物語という独自の表現方法で、昭和の子供たちに夢と希望を与え続けた偉大な作家でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に感動を与え、その功績は決して忘れられることはないでしょう。

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