山形五堰(やまがたごせき)
山形五
堰は、
山形県山形市に位置する、五つの
堰とそこから引かれる用水路の総称です。
扇状地に広がる
山形市街を網の目のように流れ、その総延長は115kmにも及びます。
2006年には疎水百選に選定され、2023年には世界
かんがい施設遺産にも登録されました。
歴史
山形五
堰の歴史は、
1624年に
山形城主の
鳥居忠政が、城の堀への給水と農業・生活用水の確保のために、馬見ヶ崎川の流路を変更し、同時に5ヶ所の取水口を設けたことに始まります。この取水口が
堰と名付けられたため、一般的に
疏水と呼ばれる水路が、山形では「
堰」と呼ばれるようになりました。
多様な役割
五
堰は、太平洋戦争前まで、農業用水や生活用水としてだけでなく、水車を利用した製粉業や精米業、養鯉、染物、鰻問屋など、様々な産業を支えてきました。また、子供たちが水遊びをする場であり、家庭では米を研ぐ水としても利用されるなど、人々の生活に深く根付いていました。
環境の変化と再生
高度経済成長期に入ると、五
堰は
生活排水や工業排水の流入により水質が悪化しました。利便性を優先した改修工事により、石積みの水路はコンクリート製に変わり、暗渠化も進みました。
1985年には、馬見ヶ崎川からの取水を一ヶ所に統合する馬見ヶ崎川合口頭首工が完成しました。しかし、その後、市による
下水道整備が進み水質が改善したため、
2001年には地域振興を目的とした「考える会」が発足し、清掃活動や啓蒙活動を通じて五
堰の再生に取り組みました。その結果、
2005年頃には御殿
堰や笹
堰で梅花藻が育ち始め、ホタルも再び見られるようになりました。
現在の活用
現在、五
堰は農業用水や防火用水としての機能に加え、歴史的な遺産として保全され、親水空間としても活用されています。
主な整備箇所
馬見ヶ崎川合口頭首工:山形蔵王インターチェンジ上流部に位置します。
山形県庁前緑地:
山形県庁議会棟前にある庭園です。
御殿・八ヶ郷堰 親水空間:小白川町五丁目に位置します。
馬見ヶ崎川河川敷遊水路:馬見ヶ崎プール「ジャバ」付近に位置します。
大学通り せせらぎ水路:山形大学小白川キャンパス周辺にあります。
ふれあい通り 親水護岸:八小~福祉体育館~旧オーヌマホテルの間にあります。
図書館通り せせらぎ水路:市立図書館周辺にあります。
六小東通り せせらぎ水路:六小~中央高校の間にあります。
天沼:南一番町のみなみ公園内にあり、五堰で唯一残る農業用ため池です。
専称寺境内:緑町三丁目の専称寺境内にあります。
光禅寺境内:鉄砲町二丁目の光禅寺境内にあります。
七日町御殿堰:中心商店街を流れ、商業施設「水の町屋七日町御殿
堰」も併設しています。現在、西側約50mの石積みを再生する計画が進められています。
済生館中央親水広場:市立病院済生館の敷地内にあります。
嶋堰せせらぎ緑道:宮町
堰下流にあり、せせらぎと緑道が整備されています。
*
大坊川せせらぎ緑道:笹
堰の南、青田南に位置し、せせらぎのある緑道が整備されています。
山形五
堰は、その歴史的価値と多面的な機能から、地域の文化と生活を支える重要な水利遺産であり、未来へと継承していくべき大切な財産です。