山形交通尾花沢線

山形交通尾花沢線（おばなざわせん）

山形交通尾花沢線は、山形県北村山郡大石田町の奥羽本線大石田駅から、尾花沢市の尾花沢駅までを結んでいた、かつて存在した鉄道路線です。わずか2.6kmという短い区間でしたが、地元では「花列車」という愛称で地域住民に親しまれていました。この路線は、山形交通が運営していましたが、その前身は尾花沢鉄道でした。

路線概要

尾花沢線の路線距離は、起終点である大石田駅と尾花沢駅の間でわずか2.6kmでした。これは日本の鉄道路線の中でも特に短い部類に入ります。使用されていた軌間は1067mmの狭軌でした。路線の全線にわたって駅は両端の大石田駅と尾花沢駅の二つのみで、途中駅はありませんでした。電化はされておらず、動力は非電化方式、また全線が単線でした。

歴史

尾花沢線の始まりは、地域で増産された米を効率的に輸送することを目的に設立された尾花沢鉄道に遡ります。特に徳良湖の灌漑整備による米の増産が、鉄道敷設の大きな動機となりました。開業後には、沿線で産出される亜炭の輸送も重要な役割となりました。

鉄道免許は1924年（大正13年）11月18日に尾花沢鉄道株式会社に対して下付され、翌1925年（大正14年）8月25日に会社が設立されました。そして、1926年（大正15年）8月16日に大石田駅から尾花沢駅までの営業運転が開始されました。

太平洋戦争中の戦時統合政策により、1943年（昭和18年）10月1日には、尾花沢鉄道は三山電気鉄道、高畠鉄道と合併し、山形交通の一部門となりました。

社会情勢の変化や輸送需要の変動に伴い、尾花沢線の運営は厳しさを増していきました。1969年（昭和44年）12月17日には列車の運行が休止され、代替としてバスによる輸送が行われるようになります。このバス代行は翌1970年（昭和45年）3月31日まで続けられました。

そして、尾花沢線は1970年（昭和45年）9月10日をもって廃止されました。当初は9月1日の廃止が予定されていましたが、国鉄との連絡業務の引き継ぎなどに時間を要したため、廃止日が延期されたという経緯があります。廃止から数日後の同年9月14日には、路線の歴史に幕を閉じる閉業式が執り行われ、記念列車が運転されました。

運行概要

廃止直前の1970年8月時点での運行状況を見ると、一日に15往復の列車が運行されていました。これは、朝5時台から夜8時台にかけて、毎時1本から2本程度の列車が運行されていたことになります。大石田駅と尾花沢駅間の所要時間は8分でした。わずか2駅間とはいえ、地域住民の足として比較的頻繁に列車が運転されていたことがわかります。

車両

尾花沢線では、開業から廃止まで様々な車両が活躍しました。旅客輸送は主に客車で行われ、最後まで気動車（ガソリンカーやディーゼルカー）が導入されることはありませんでした。

動力車としては、開業時には鉄道省から譲り受けた小型の蒸気機関車が使用されました。その後も国鉄や他私鉄から譲渡された蒸気機関車が複数使用されましたが、これらは早期に姿を消しました。

路線の廃止時まで在籍していたのは、協三工業製の15t級B形ディーゼル機関車であるDB151形、DB152形でした。これらは全長6m弱と非常に小型で、被牽引する客車や貨車よりも小さいという特徴がありました。動力伝達方式はロッド式で、東日本重工業製のエンジンを搭載していました。廃線後、DB151は他の場所で活用されたのち西武鉄道へ、DB152は尾花沢市内に保存されましたが老朽化のため解体され、現在は大石田駅に一部部品が残されています。

旅客を乗せる客車も、様々な鉄道会社からの譲渡車が中心でした。開業時の二軸客車から始まり、後に有田鉄道や神中鉄道（東武鉄道経由）、西武鉄道、近江鉄道などからの譲渡車が使用されました。特に廃線時まで在籍したハフ2（2代目）、ハフ3（2代目）、ハフ4（2代目）は、それぞれ元神中鉄道のディーゼル動車、元西武鉄道の電車、元近江鉄道の客車という多様な出自を持つ車両でした。これらの客車の多くは、廃線後も山形交通の他の路線（高畠線、三山線）へ転用されましたが、実際に使用される機会は少なく、その後の廃線とともに姿を消したものが多いようです。一部の車両は保存が試みられましたが、現存しないものも多いとされています。

貨物輸送に使用された貨車としては、廃線時まで在籍した有蓋緩急車のワフ1や、有蓋車のワ14、無蓋車のト12などがありました。これらも旧鉄道省からの譲渡車などが含まれていました。

駅

尾花沢線の停車駅は、奥羽本線と接続する大石田駅と、終点の尾花沢駅の二つだけでした。尾花沢駅は現在、山形交通グループである山交バスの尾花沢待合所として利用されています。

まとめ

山形交通尾花沢線は、わずか2.6kmの短いながらも、地域の米や亜炭輸送、そして住民の移動手段として重要な役割を果たしました。「花列車」として親しまれたこの路線は、時代の変化とともにその役目を終え、1970年に静かにその姿を消しました。しかし、一部の車両部品が大石田駅に残されるなど、その歴史の一端が今も記憶されています。

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