山本周五郎時代劇 武士の魂

山本周五郎時代劇 武士の魂

『山本周五郎時代劇 武士の魂』（やまもとしゅうごろうじだいげき ぶしのたましい）は、2017年に日本のBSジャパンで製作・放送されたテレビドラマシリーズです。2017年4月4日から同年9月12日にかけて、毎月前半の火曜日（原則として第一・第二火曜日）に、全12話が放送されました。このユニークな放送スケジュールも特徴の一つでした。

本シリーズの大きな特徴は、昭和を代表する時代小説家、山本周五郎の豊かな世界観を持つ短編小説を原作としている点です。一話完結形式で、山本周五郎作品に描かれる、武士たちの内面や日常、そして彼らが直面する人間的な悩みや葛藤に深く焦点を当てています。単なる剣戟時代劇ではなく、名もなき武士や浪人、あるいはその家族が、誇り、忠義、人情、時には自らの弱さと向き合いながら生きる姿を描くことで、「武士の魂」という普遍的なテーマを現代に問いかけました。

本番組が放送された時間帯は、BSジャパンが過去に「松本清張ミステリー時代劇」、「山本周五郎人情時代劇」、「男と女のミステリー時代劇」、「人形佐七捕物帳」といった質の高い時代劇シリーズを送り出してきた枠でした。本作はこれらの流れを汲みつつ、このシリーズの開始をもって枠名称が新たに「火曜ドラマ」と改称され、BSジャパンの時代劇ラインナップの顔となる位置づけでした。

ドラマの製作は、数多くの時代劇を手掛けてきたドラマデザイン社が担当しました。番組の魅力を伝えるため、放送開始に先立つ2017年3月28日には、スペシャル番組「会津へGO！見て聞いて食べて発見！山本周五郎が描いた武士の日常」が放送され、原作者である山本周五郎ゆかりの地を巡ることで、作品世界への理解を深める試みが行われました。

全12話はそれぞれ異なる短編を映像化しており、物語ごとに舞台や登場人物が一新されます。このオムニバス形式により、各話にはその物語に最適な実力派俳優が主演として迎えられました。第一話の石黒賢をはじめ、田村亮、田中幸太朗、的場浩司、山下リオ、窪塚俊介、笠原秀幸、団時朗、落合モトキ、渡部豪太、川村陽介、水田航生などが各話の主役を熱演し、物語世界を豊かに彩っています。脇を固める俳優陣も、作品世界に深みを与える演技を見せました。

番組を特徴づける要素の一つに、ナレーションを務めた片岡鶴太郎の存在があります。その重厚かつ情感豊かな語り口は、ドラマの世界観をより一層引き立てました。また、主題歌として採用された平原綾香の楽曲「約束のこの瞬間（とき）」（作詞作曲：原由子）は、心に響くメロディーと歌詞で、各話の余韻を深くしました。

脚本は、大前智里、横田理恵、李正姫といった面々が原作の魅力を活かしつつ、映像作品としての構成を手掛けました。監督は皆元洋之助、永江二朗、新村良二らが各話を担当し、多様な演出を展開しました。プロデューサーは、BSジャパンの瀧川治水とドラマデザイン社の山本和夫が共同で務めました。

本シリーズは批評家からも高い評価を得ており、特に第一話「大将首」は、その年の優れたテレビ番組に贈られる2017年日本民間放送連盟賞において、テレビドラマ種目の優秀賞を受賞するという栄誉に輝きました。

『山本周五郎時代劇 武士の魂』は、山本周五郎作品の精神を受け継ぎ、時代背景を超えた人間の普遍的なテーマと、武士という存在の多面性を描き出した秀作時代劇シリーズとして、放送後も多くの時代劇ファンに語り継がれています。

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