山本嘉次郎

山本 嘉次郎（やまもと かじろう）

山本嘉次郎は、1902年3月15日に東京市銀座で生まれ、1974年9月21日に死去した日本の映画監督、俳優、脚本家、随筆家です。彼は映画の世界で非常に多才な人物であり、俳優としてのキャリアをスタートした後、監督や脚本家としても活躍しました。初期には平戸延介や平田延介といった別名でも知られていました。

略歴

山本は父・嘉太郎のもとで生まれ育った。慶應義塾大学理財科在学中に偶然映画に出演する機会を得、その後1920年に映画『真夏の夜の夢』で岡田嘉子と共演し俳優デビューを果たしました。大学を中退して映画界に入るも、親からの勘当を受け、その手切金をもとに1922年には「無名映画協会」を設立し、自ら主演した作品も手がけました。その後、日活に入社して、助監督や脚本の仕事をこなしながら映画制作に参加しました。

特に彼の脚本作品で有名なのは、田坂具隆監督による『春と娘』（1932年）であり、これは日本初のアフレコによる全発声映画とされています。関東大震災後、彼は関西で「早川プロダクション」を結成し、『熱火の十字球』（1924年）を監督し、これが彼の監督デビュー作となります。

1940年代には特に活躍が目立ち、P.C.L.に移籍後、エノケンの映画を多く手がけました。『エノケンのどんぐり頓兵衛』（1936年）や『エノケンのちゃっきり金太』（1937年）などは、音楽とギャグを融合させた名作として広く認識されています。さらに、1938年には高峰秀子主演の『綴方教室』を監督し、当時としては珍しいテーマを扱った作品として高く評価されました。

戦中・戦後の活動

山本は第二次世界大戦中も映画制作を行い、1942年には『ハワイ・マレー沖海戦』を制作する際に、大きな困難に直面しました。海軍省の命令で作成されるも、日本の航空母艦の資料が利用できず、アメリカの航空母艦に似たセットを組んだ結果、完成試写時に日本の宮家から激怒される事態に陥りました。その後も困難を乗り越え、戦後も東宝に復帰して多くの作品を生み出しました。

戦後には東宝争議を経て1951年に復帰。1953年には東宝初のカラー[[映画]]『花の中の娘たち』を制作し、その才能を改めて示しました。

指導者としての側面

晩年には監督作品は減少しましたが、脚本家としての活動を続けました。また1960年代には東宝の俳優養成所の所長を務め、後進の育成にも力を入れました。その人柄から「ヤマカジ先生」と慕われ、多くの俳優や制作スタッフに影響を与えました。

人物像

山本は非常に好奇心が旺盛で博学であり、グルメでもあったためあだ名を「ナンデモカジロウ」とされることもありました。著書も多く、特に食の体験に関する著作が有名です。また、彼はラジオ番組『話の泉』にも出演し、その幅広い知識を認知されました。

彼の葬儀は撮影所で友人葬として行われ、かつて彼に見出された俳優、三船敏郎が世話役を務めました。山本嘉次郎は業界内外で長く記憶される人物として、映画界に多大な影響を与え続けているのです。

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