山本照

山本照の生涯と功績

山本照（やまもと てる、1902年11月18日 - 1998年10月27日）は、愛知県出身の著名なNHKアナウンサーで、相撲中継における先駆者とされています。相撲ファンとしての彼の情熱は、幼少期から始まりました。彼は四人兄妹の三男として育ち、愛知県立第四中学校に在籍していた際には相撲部に所属。小柄な体格ながら、力強い腕と独特の技術を持ち、県内の中学校相撲大会にも出場しました。この時期に培った相撲への愛情と知識が後のキャリアに大いに寄与することになります。

学生時代と初期のキャリア

東京外国語学校（のちの東京外国語大学）に進学した山本は、大相撲の本場所期間中に授業を放棄して国技館に通うほどの相撲好きでした。そのため、友人から「角狂」と呼ばれることもありました。卒業後、彼は報道の世界に入ることになります。1925年4月には「萬朝報」に入社し、1927年10月には國民新聞に移籍。そこで相撲記者としてのキャリアをスタートしました。

1932年、山本はNHKに入局し、アナウンサーとしての道を歩み始めます。1933年1月の春場所では、実況デビューを果たし、特に双葉山定次の全盛期における相撲中継を担当しました。彼の実況スタイルは多くの聞き手に親しまれ、彼の解説によって力士の人間性や生活ぶりが伺える内容となりました。

戦時中の活動と戦後の復帰

1942年、彼はNHK名古屋放送局へ異動することになり、戦時中にはインドネシアのスマトラ島に派遣されました。士気の低下や安全上の懸念から、放送局の設立には多くの困難が伴いましたが、現地での語学力を活かし、順調に放送業務を行うことができました。戦後、彼は1946年に日本に帰国し、再びNHKに復帰します。

彼は後に、東京本部報道部の部長や名古屋放送局の部長を歴任し、多くの後輩アナウンサーを育成しました。特に、テレビ実況の第一号となる石田吾郎や、著名アナウンサーの杉山邦博の育成に尽力しました。

アナウンサーとしての特徴

山本は、相撲中継の実況において独自のスタイルを確立しました。彼は記者出身でありながらも、アナウンス能力において一定の個性を持っていました。同じNHKの松内則三が美辞麗句を並べるスタイルや、河西三省の理路整然とした実況とは一線を画していました。時には三河なまりが感じられましたが、その親しみやすさと独特の表現力が、多くのファンに愛される理由となっていました。

また、彼は行司や呼出の重要性も説いており、相撲界における包括的な理解を持っていました。後輩アナウンサーに対しては、実技を通じて相撲の技術を教えるなど、熱心な指導者でもありました。彼はアナウンスのフォーカスを勝ち力士に留めるのではなく、相手力士の状況も十分に説明することを重要視していました。

晩年の活動と死

山本は1998年10月27日に95歳でこの世を去るまで、悠々自適の生活を送りました。晩年にはスポーツ放送に対して厳しい見解を持ち、放送内容の深みが不足していることを指摘しました。彼の生涯は、日本の相撲界および放送界において、歴史的な意義を持っています。彼の独自の視点と充実した知識は、今も多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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