山本進一 (法学者)

山本進一氏は、日本の法学界に多大な足跡を残した法学者であり、裁判官、弁護士としての多様なキャリアも経験した人物です。1925年（大正14年）2月5日に東京で生を受け、2013年（平成25年）1月25日に87歳でその生涯を終えました。専門は民法全般にわたり、理論と実務の両面からその深化に貢献しました。

山本氏の学歴は、まず慶應義塾商業学校で学び、その後、明治大学専門部法科、さらに明治大学法学部へと進みました。学窓で研鑽を積む傍ら、卒業を目前にした1945年には太平洋戦争のさなかに召集令状（赤紙）を受け軍務に就きましたが、終戦に伴い無事復員しました。戦後の混乱期を経て、1947年には司法への道を切り開く難関である高等試験司法科試験に見事合格しました。

法曹としての第一歩は裁判官として踏み出されました。1949年、東京地方裁判所判事補に任官。その後、短期間ではありましたが、1952年には東京簡易裁判所判事も併任しています。しかし、1953年に裁判官の職を辞し、研究と教育の世界へと活躍の場を移します。母校である明治大学法学部の助教授として民法を担当することになり、同時に弁護士としても登録を行いました。

明治大学に移籍後、山本氏は教育者・研究者としての才能を存分に発揮します。翌1954年には早くも法学部教授に昇任し、民法全般にわたる深い学識と洞察力をもって多くの学生や研究者を指導しました。大学の運営にも深く関与し、1968年からは評議員として、また1972年から1975年には法学部長として、さらに1978年から1980年には法制研究所長として、大学の要職を歴任しました。

山本氏のキャリアにおいて最も重要な時期の一つは、1980年から1988年までの8年間、明治大学の学長を務めた期間です。このリーダーシップを発揮した期間、大学の発展と学術研究の振興に尽力しました。学長退任後も、1992年から1995年まで再び評議員を務めるなど、大学への貢献を続けました。

1995年に明治大学を定年退職した後、長年の功績を称えられ、同大学名誉教授の称号が贈られました。また、同年から2000年まで、松坂大学現代法経学部の客員教授としても教壇に立ち、次世代の育成にあたりました。

学術的な業績としては、民法学における理論的な深掘りがあります。1962年には、「無効行為転換の理論」に関する画期的な論文によって明治大学から法学博士の学位を授与されました。この研究は、民法における行為の有効性や解釈に関する重要な視点を提供するものです。さらに、1967年から1971年にかけては、日本の法曹界を担う人材を選抜する旧司法試験の第二次試験考査委員を務め、その専門知識を試験制度にも活かしました。

山本氏の学術的貢献は、多数の著書によっても示されています。特に注目されるのは、有斐閣からシリーズとして刊行された民法関連の共編著です。これらのシリーズは、民法総則、物権、担保物権、債権総論、契約各論、事務管理・不当利得・不法行為、親族、相続といった民法の主要分野を網羅しており、当時の民法教育や学習において基本的な文献として広く利用されました。また、実務に直結した『不動産売買の法律相談』や『不動産取引』の共編・編著、初期の共著である『民法概論』（弘文堂）、そして研究書としての『民法研究』（信山社出版）など、その著作は理論から実務まで幅広い領域に及びます。これらの著書群は、山本氏が民法全般にわたる広範な知識を持ち、それを教育や実務に還元しようとした姿勢を示すものです。

山本進一氏は、法曹界、学術界、そして大学行政において、それぞれ異なる立場から日本の法と教育の発展に貢献しました。その研究成果は現在も多くの著書として残り、民法学の研究者や実務家にとって貴重な遺産となっています。

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