山波抗争

山波抗争（1990年）

山波抗争は、1990年6月28日から12月27日にかけて、五代目山口組（組長：渡辺芳則）と波谷組（組長：波谷守之）の間で繰り広げられた大規模な暴力団抗争事件です。

抗争の背景

抗争の発端は、安井武美という人物の組織加入を巡るトラブルでした。波谷組員の岩田好晴が安井を半ば強引に波谷組へ勧誘しようとしたのに対し、安井はこれを拒否。山口組傘下の弘道会西岡組への加入を希望し、西岡組の舎弟となったことが、波谷組側の反感を買いました。

事件の勃発

1990年6月28日未明、波谷組組員・岩田好晴は、福岡市西区にあった安井の自宅駐車場で安井を銃撃。安井は胸や脇腹に6発の銃弾を受け、搬送先の病院で死亡しました。この事件をきっかけに、山口組と波谷組の間の激しい抗争が幕を開けます。

報復合戦の激化

安井の死亡後、同日夜には波谷組系川田興業事務所が銃撃され、幹部が重傷を負う事件が発生。翌日には波谷組関係各所への銃撃が相次ぎました。大阪市内の波谷組系事務所や、天野洋志穂組長の自宅などが標的となり、抗争は激化の一途を辿ります。

一般市民誤射事件

抗争が激化する中、1990年6月29日には、大阪市住之江区で元NTT職員の男性が山口組系組員に誤って銃撃され死亡するという痛ましい事件が発生しました。男性は宅配業者を装った組員に襲われ、足を撃たれ死亡。この男性は、事件の13日前に引っ越してきたばかりで、以前は波谷組幹部が住んでいたことから、組員に間違われたものと見られています。

この事件を受け、山口組若頭の宅見勝は、顧問弁護士を通じて被害者の通夜への出席を申し入れましたが、警察に拒否されました。

山口組の対応と抗争の終結

一般市民を巻き込む事態に発展したことを重く見た山口組は、緊急幹部会を開き、事態の収拾を図ります。山口組総本部は直系組長に対し、抗争の全面中止を指示するとともに、犠牲者の冥福を祈るため、喜び事の自粛を求めました。また、顧問弁護士が被害者の通夜に参列し、香典を渡そうとしましたが、遺族に拒否されています。

一方、波谷組が所属する西日本二十日会でも、抗争についての討議が行われました。大阪府警は波谷組組長の自宅を警備するなど、警戒を強化しました。

その後も、組員の拉致・監禁、銃撃事件などが相次ぎましたが、1990年12月、波谷組が四代目共政会に仲介を依頼し、山口組との手打ち交渉が開始されました。波谷組組長は引退しないものの、若衆を手放すという条件で合意。12月24日には山口組が全国の直系組織に抗争終結を伝え、12月27日、波谷組組長が弘道会本部を訪れ、事件を謝罪したことで、山波抗争は終結しました。

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