山田三七郎

山田三七郎（やまだ さんしちろう）

山田三七郎（1871年7月14日 - 1932年5月25日）は、明治から昭和にかけての日本の教育者であり、社会事業家です。愛知県愛知郡豊明村（現在の名古屋市）に、刈谷藩藩士の子として生まれました。クリスチャンであり、教育者として、また社会貢献家として多岐にわたる活動を展開しました。

生涯

幼少期から青年期

山田三七郎は、戊辰戦争の影響で複雑な家庭環境に育ちました。刈谷藩が朝廷派と幕府派に分裂したことで暗殺事件が発生し、母が養子に出されるなど、不遇な幼少期を過ごします。その後、山田家に養子に入り、家督を継ぐことになります。双峰小学校、愛知県立中学校を経て、愛知一中（現在の旭丘高校）を優秀な成績で卒業。教員として知多郡有松小学校に赴任します。

キリスト教との出会いと愛光舎での活躍

教員時代に、全国的な禁酒運動やキリスト教の啓蒙活動に触発され、美山貫一牧師の感化を受けて入信。1896年（明治29年）には、美山牧師の紹介で角倉賀道が経営する愛光舎に入社し、26歳にして総支配人に就任。当時、天然痘撲滅のためのワクチン製造に必要な牛乳を生産するため、ホルスタインの輸入や牧場経営に尽力しました。愛光舎牧場は日本最大規模を誇り、近代酪農の先駆けとなりました。

1902年（明治35年）には、角倉賀道と同じバプテスト派信徒である旧佐賀藩士の名和儀三郎の長女、名和寿々と結婚。元尾張藩士の子である山田が士族の娘を娶ることは、当時としては珍しいことでした。新婚時代から自宅で聖書研究会を開き、若い信者たちとの交流を深めました。橋本徹馬らを支援し、政治機関紙『活青年』を創刊するなど、言論活動も積極的に行いました。

愛光舎事件とその後

1913年（大正2年）には、愛光舎で製造された牛乳に結核牛からの搾乳という疑いがかけられ、不正牛乳事件が勃発。法的整備が不十分な時代であり、多くの牧場や牛乳販売店が腐敗牛乳による健康被害で訴えられました。山田は1914年（大正3年）に愛光舎を退社し、その後は訴訟対応に追われることとなりました。

国士舘大学の創立と東亜商業学校の設立

1917年（大正6年）、山田は国士舘大学創設の準備委員に任じられ、大民団の本部員として機関紙編集に携わりました。かねてから教育について議論を交わしていた西尾豊作と共に、実学を中心とした教育機関の必要性を痛感し、1924年（大正13年）に東亜商業学校（甲種5年制）を設立しました。しかし、関東大震災の影響で経営難に陥り、1928年（昭和3年）には寺本伊勢松らの協力を得て再建を図りました。

晩年と死

1932年（昭和7年）5月25日、山田三七郎は61歳で生涯を閉じました。昭和9年11月には、西尾豊作と東亜商業学校の卒業生有志によって顕彰碑が建立され、彼の功績が讃えられました。石碑は現在、中野区の東光寺に置かれています。

家族

山田三七郎には、山田功と山田了介という二人の息子がいました。

山田功：東北帝大工学部を卒業後、王子製紙で工場長や常務を歴任しました。
山田了介：慶応高等学校を卒業後、日本金属工業や金星工業、金星製紙の社長を務めました。

孫には山田徹がおり、本田技研に入社後、ホンダ・トレーディング副社長を務めました。徹の妻は画家の中井洋子であり、親族にはサントリー常務取締役の中井進や作家の中井勝がいます。

関係のあった人々

山田三七郎は、多くの著名人と交流がありました。

宇都宮千太郎：札幌の酪農の父と呼ばれる人物で、山田の縁談で出納陽一と結婚。
出納陽一：北海道酪農義塾（後の酪農学園）を創設し、愛光舎に入社後に宇都宮千太郎の次女と結婚。
美山貫一：牧師
西尾豊作：歌人・教育者
阪本釤之助：枢密院顧問
寺本伊勢松：教育者
橋本徹馬：政治家
尾崎行雄: 政治家

その他、頭山満、野田卯太郎など、政界や実業界の有力者との交流がありました。

参考文献

書籍「帝都紳士淑女列伝 第 3 巻14page」
「山田君碑」（中野区東光寺、阪本釤之助、記銘寄贈）
東亜商業学校設立認可証（大正13年5月13日付、東京都公文書館所蔵）
東北帝国大学学友会誌目録(2)　工明会誌
日本におけるミルクの歴史 一般社団法人Jミルク
酪農学園草創史

山田三七郎は、教育者として、また社会事業家として、多岐にわたる分野で貢献しました。彼の功績は、今もなお語り継がれています。

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