山県大弐

山県大弐（やまがた だいに）

山県大弐（1725年 - 1767年）は、江戸時代中期の儒学者、思想家です。武田氏家臣の末裔とされ、尊王攘夷の思想を唱え、後世に影響を与えました。

生涯

甲斐国（現在の山梨県）に生まれ、幼少期から学問に励みました。山崎闇斎の流れを汲む儒学者や太宰春台の弟子に師事し、京都にも遊学して医術や儒学を修めました。その後、山梨郡下小河原山王神社の宮司となり、尊王攘夷の思想を説きました。

1750年に村瀬家を継ぎますが、弟の事件により浪人となります。その後、山県家に戻り、江戸で医者として生計を立てます。江戸幕府の若年寄・大岡忠光に仕え代官を務めましたが、忠光の死後、職を辞し、私塾「柳荘」を開いて儒学や兵学を講じました。

1759年には、代表的な著作である『柳子新論』を著し、尊王論を説きました。しかし、小幡藩の内紛に巻き込まれ、1766年に幕府に謀反の疑いを密告され逮捕。翌年、門弟の藤井右門と共に処刑されました（明和事件）。

思想と著作

山県大弐は、古文辞学の立場から儒学を研究し、独自の思想を形成しました。代表作である『柳子新論』では、朱子学的な大義名分論に基づき、官僚批判を展開。「士農工商は階級ではなく職務上の分担」と人間尊重を唱え、尊王攘夷を説きました。また、天文学、音楽、医学など様々な分野にも精通し、多くの著作を残しました。

顕彰

山県大弐の思想は、後世の尊王攘夷運動に影響を与えたとされています。明治維新後、その功績が認められ、1891年には正四位が贈られました。生地には山県神社が建立され、現在も地域の人々から「学問の神様」として崇敬されています。また、東京都新宿区の全勝寺にも記念碑が建立されています。

『柳子新論』

『柳子新論』は山県大弐の代表的な著作であり、彼の思想の中核をなすものです。この書は、当時の社会体制や政治に対する批判精神にあふれており、尊王攘夷の思想が色濃く反映されています。ただし、松陰が実際に『柳子新論』を読んだ確証は見られていません。

山県神社

山県神社は、山梨県甲斐市篠原に鎮座する神社で、山県大弐を祭神としています。地元では「学問の神様」として親しまれ、合格祈願や学業成就を願う参拝者が多く訪れます。例大祭では、山県大弐に扮した仮装行列や神輿が参道を練り歩く「大弐学問祭」が開催され、賑わいを見せています。

山県大弐「抹殺」問題

昭和初期には、国定教科書から山県大弐に関する記述が削除されるという問題が発生しました。これに対し、地元を中心に記述復活を求める運動が起こり、最終的には教科書に再掲載されることとなりました。この問題は、当時の社会情勢や教育における思想統制の問題を浮き彫りにするものとして、注目を集めました。

山県大弐は、江戸時代中期に独自の思想を唱え、後世に影響を与えた人物です。その思想や業績は、現代においても評価され、顕彰されています。

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