山科礼蔵

山科礼蔵：実業家から政治家へ、そして南米事業へ

山科礼蔵（1864年-1930年）は、広島県出身の稀代のマルチタレントと言える人物です。政治家としての顔と、実業家としての顔、そして南米開発事業への関与という、三つの側面から彼の人生と功績を紐解いていきましょう。

多彩な学問と実業への挑戦

彼は若い頃から勉学に励み、和学、漢学、英語、経済学、そして工学と幅広い知識を習得しました。特に英語は土井百穀の私塾、漢学は長谷川桜南の私塾で研鑽を積んだと伝えられています。

学問で培った知識を土台に、山科礼蔵は実業界に足を踏み入れます。1884年には東京へ上京し、郷土の特産品を販売する「吉備商会」を設立。さらに、海事工業を専門とする「山科海事工業所」を設立し、築港、架橋、船渠建設、岩礁破砕、難破船の引揚、埋立など、多岐にわたる事業を展開しました。これらの事業を通して、彼は実業家としての才能を開花させ、着実に成功を収めていきます。その傍ら、海事工業株式会社取締役、山科汽船株式会社監査役、東京商業会議所議員、副会頭などを歴任し、経済界での地位を確立していきました。

政治家としての活動

実業家としての成功を背景に、山科礼蔵は政治の世界にも進出します。1902年の第7回衆議院議員総選挙に広島県郡部から憲政本党公認で立候補し、当選を果たしました。しかし、翌年の第8回総選挙では落選。政治家としての活動期間は短かったものの、この経験は彼の人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。

南米事業への関与とブラジル視察

衆議院議員を退いた後も、山科礼蔵は精力的に活動を続けました。東京商業会議所会頭、南米土地株式会社社長、日本海事工業株式会社取締役、山下汽船監査役などを歴任。中でも特筆すべきは、南米事業への関与です。

大正11年（1922年）には、ブラジル独立百年祭を機に、南米実業視察団を組織し、自ら団長としてブラジルを訪問しました。この視察団には、各界の有力者や企業関係者など多数のメンバーが参加しており、山科礼蔵の経済界における影響力の大きさを示しています。

また、南米土地株式会社を設立し、南米の土地を買収して日本移民に売却する事業にも携わりました。パラナ州奥地の2万5000ヘクタールの土地を購入し、コーヒー農園として開発したり、日本人移民への分譲を行うなど、大規模な事業を展開しました。これらの事業は、ブラジルにおける日本移民の定着と発展に貢献したと言えるでしょう。

まとめ

山科礼蔵は、実業家として、政治家として、そして南米開発事業の先駆者として、多方面で活躍した人物です。彼の活動は、近代日本の発展に大きく貢献したと評価できます。多様な分野での経験と知識、そして行動力こそが、山科礼蔵という人物を特徴づける要素と言えるでしょう。彼の生涯は、現代社会においても学ぶべき点が多く含まれていると言えるでしょう。

もう一度検索