山葵沢地熱発電所

山葵沢地熱発電所

秋田県湯沢市の南方に位置する山葵沢地熱発電所は、日本の主要な地熱発電施設の一つです。県道310号線沿いにその姿を見せるこの発電所は、2019年5月に商業運転を開始しました。

設備概要と特長

山葵沢地熱発電所の最大出力は46,199キロワット(kW)に達します。これは運転開始時点で、日本国内の地熱発電所としては4番目に大きな設備容量を誇るものでした。また、1万キロワットを超える規模の地熱発電所が国内で新たに稼働するのは、実に23年ぶりという画期的な出来事でした。

発電方式には「ダブルフラッシュ方式」が採用されています。これは、地熱流体を減圧して二段階で蒸気を取り出し、タービンを回す効率的な方法です。発電に必要な蒸気は、3箇所に設けられた生産基地に掘削された合計9本の生産井から供給されます。蒸気を利用した後の熱水は、そのまま地上に放置されるのではなく、環境への影響を最小限に抑えるため、約2.4キロメートル離れた還元基地まで専用の配管を通じて送られます。そこで、7本の還元井を用いて再び地下深部へと戻されます。このような循環システムにより、持続可能な形で地熱資源を利用しています。

運営体制

本発電所を運営するのは湯沢地熱株式会社です。この会社は、日本の主要エネルギー企業である電源開発株式会社、資源開発や素材分野に強みを持つ三菱マテリアル株式会社、そして化学メーカーである三菱ガス化学株式会社の3社が出資して、2010年に設立されました。発電された電力は、国の固定価格買い取り制度を利用し、東北電力株式会社に供給されています。これにより、再生可能エネルギーの普及と地域の電力安定供給に貢献しています。

プロジェクトの沿革

山葵沢地域における地熱開発プロジェクトは、長年にわたる調査研究を経て実現しました。

1993年度～1999年度: 新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）がこの地域での広域的な地熱調査を実施。
2004年度: 三菱マテリアル株式会社が秋ノ宮地域で独自の調査を継続。
2008年度: 電源開発株式会社と三菱マテリアル株式会社が共同で、山葵沢地域でのさらなる調査を進める。
2010年度: プロジェクト推進のため、湯沢地熱株式会社が設立される。
2011年11月～2014年10月: 建設に向けた環境影響評価（環境アセスメント）を実施。
2015年5月: 山葵沢地熱発電所の本体建設工事に着手。
2019年5月: 発電所が無事に完成し、商業運転を開始。
2021年1月: 本発電所の導入活動が評価され、新エネルギー財団による「令和2年度新エネ大賞」の資源エネルギー庁長官賞（導入活動部門）を受賞。

山葵沢地熱発電所は、日本のエネルギー自給率向上と低炭素社会の実現に向けた重要な役割を担っています。長年にわたる技術開発と関係者の努力の結晶として、安定したクリーンエネルギー供給源となっています。

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