山辺大鶙

山辺大鶙（やまのべ の おおたか）

山辺大鶙は、古代日本の豪族として『古事記』に登場します。彼の存在は生没年が不明ですが、大和国（現在の奈良県）山辺郡の出身であると推測されています。『日本書紀』には山辺大鶙の代わりに彼の祖先である「天湯河板挙」が登場し、いくつかの物語が語られています。

物語の概要

物語は垂仁天皇の時代に遡ります。主人公である本牟智和気王（ほむちわけ の おおきみ）は成人しても言葉を話すことができませんでした。ある日、彼が船遊びをしていると、空高く飛んでいる鵠（くぐい）の声を耳にします。この音に触発されて、彼はついに言葉を発し始めました。

天皇である父は、鵠を捕まえるよう山辺大鶙に命じました。大鶙は紀伊国、播磨国、因幡国、丹波国、但馬国などを経て、さらに東へ向かい近江国、美濃国、尾張国、信濃国を経由して越国にまで至ります。そこで彼は罠を張り、見事に鵠を捕獲しました。この場所はやがて「和那美之水門（わなみのみなと）」と名付けられました。残念ながら、王子は依然として言葉を発する気配が見られませんでした。

その後、天皇は大国主神の夢に導かれ、出雲大社の神殿を修復し、参拝する機会を設けると、王子はついに言葉を話すことができるようになりました。この出来事が影響し、鳥取部、鳥甘部、品遅部、大湯坐、若湯坐などの部族が定められました。

『日本書紀』との違い

『日本書紀』でも同様の伝説が伝えられていますが、こちらでは山辺大鶙の代わりに天湯河板挙が登場します。天湯河板挙は帝の命に従い、出雲国まで鵠を追いかけ捕獲し、天皇に献上します。王子がその鵠と遊んでいる間に言葉を覚えるという展開は、『古事記』と同様です。捕獲後、天湯河板挙は姓を「鳥取造」と名乗り、あわせて鳥取部、鳥養部、誉津部などが設置されました。

地域との関連性

山辺大鶙の名前は、彼が住んでいた地域や神社とも関わりがあります。宮城県柴田郡大河原町の大高山神社には「大鷹宮」という銘の鰐口があり、これは古事記との関連性を示唆しています。また、古代には鷹を用いて白鳥を捕獲する技術が大陸から伝来したとされ、山辺大鶙の名前は鷹を擬人化したものと考えられています。

群馬県前橋市には「鳥取」という小字が存在し、そこにも鳥取神社が築かれています。この神社の祭神も山辺大鶙に関連しています。

まとめ

山辺大鶙の物語は、日本の古代史や神話における重要な一部であり、地域と密接に結びついています。この伝説を通じて、古代の日本の社会構造や文化、さらには習慣が垣間見えます。彼の物語は、代々受け継がれる神話の重要な例として、今も多くの人々に語り継がれています。

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