岐阜
陸軍航空整備学校は、日本陸軍が太平洋戦争中に設けた
軍学校の一つです。主に少年飛行兵を対象に、航空兵器の整備に関する専門的な教育を行いました。
1943年(
昭和18年)4月に開校し、
岐阜県稲葉郡(現在の
各務原市東部)に本部を、
奈良県奈良市には奈良教育隊が置かれました。
1945年(
昭和20年)2月には、第4航空教育団に改編され、同年8月の終戦に伴い廃止されました。
設立までの経緯
陸軍における航空兵器の整備教育は、当初は飛行部隊内の材料廠で行われていました。
1919年(
大正8年)に陸軍航空学校(後の
所沢陸軍飛行学校)が設立されると、同校が教育と研究を担当するようになりました。高度な技能が求められる航空機の整備には、若年層の教育が有効であると判断され、
1934年(
昭和9年)から
所沢陸軍飛行学校で10代の志願者から試験合格者を選抜し、
下士官となるための教育が始まりました。
1935年(
昭和10年)には航空技術と整備を専門とする陸軍航空技術学校が設立され、
1938年(
昭和13年)には所沢に
陸軍航空整備学校が新設され、技術分野の少年
下士官候補者の教育が移管されました。
1940年(
昭和15年)4月には、少年
下士官候補者は少年飛行兵と命名されました。太平洋戦争の開戦により、航空兵力の増強が急務となると、少年飛行兵の採用数を増やすため、航空整備学校の増設が必要になりました。
1943年(
昭和18年)4月、岐阜
陸軍航空整備学校が設立されました。この学校は「航空兵器の整備に従事する少年飛行兵及び、少年飛行兵となるべき生徒を教育する」ことを目的としていました。学校の組織は、陸軍航空総監の指揮下にある校長のもと、幹事、本部、そして複数の教育隊からなっていました。生徒は教育隊に所属し、さらに細分化された内務班で生活を送りました。
岐阜
陸軍航空整備学校では、主に以下の者を教育対象としていました。
生徒: 航空兵器の整備に必要な教育を受ける少年飛行兵。陸軍少年飛行兵学校の卒業者、または召募試験の合格者。
修学期間は約1年で、通常年2回入学。
その他、必要に応じて将校以下を召集し、教育を行うこともありました。
生徒の条件にある「召募試験の合格者」とは、陸軍少年飛行兵学校での基本教育を経ずに、直接専門教育を受ける少年飛行兵乙種制度で採用された者を指します。1943年4月には、少年飛行兵第14期乙種の生徒502名が入校しました。
1944年(昭和19年)4月には、生徒数の増加に対応するため、奈良県奈良市に奈良教育隊が設置され、少年飛行兵第16期乙種の生徒1024名が入校しました。また、同年から特別幹部候補生の教育も開始されました。
第4航空教育団への改編
太平洋戦争の戦況が悪化し、日本本土が戦場になる可能性が高まる中、陸軍は航空関係の学校を戦力化する方針を決定しました。1944年(昭和19年)6月には、まず各地の陸軍飛行学校と整備学校が教導飛行師団や教導航空整備師団に改編されました。
1945年(昭和20年)2月には、岐阜陸軍航空整備学校も第4航空教育団に改編されました。第4航空教育団は、団司令部と4つの航空教育隊で構成されました。岐阜陸軍航空整備学校の教育隊は、岐阜第1航空教育隊と岐阜第2航空教育隊となり、それぞれ約2000名以上の少年飛行兵や生徒を教育する計画でした。また、奈良教育隊は奈良航空教育隊となり、約1200名の少年飛行兵や生徒を教育することになりました。
しかし、1945年8月には終戦を迎え、第4航空教育団も解散しました。
年譜
1943年4月:
岐阜県稲葉郡に岐阜
陸軍航空整備学校を設置。
1944年4月: 奈良県奈良市に岐阜陸軍航空整備学校奈良教育隊を設置。
1945年2月: 岐阜
陸軍航空整備学校を第4航空教育団に改編。
1945年8月: 終戦、以後逐次復員。
歴代校長等
田中誠三 少将:
1943年8月2日 -
1944年8月1日
谷内誠一 大佐:1944年8月1日 - 1945年2月20日
第4航空教育団
谷内誠一 大佐:
1945年2月20日 -
各教育隊隊長
岐阜第1航空教育隊: 加藤秀三 中佐(1945年2月20日 - )
岐阜第2航空教育隊: 児島義徳 中佐(
1945年2月20日 - )
* 奈良航空教育隊: 島田仁市郎 中佐(
1945年2月20日 - )
終戦とその後
終戦後、岐阜
陸軍航空整備学校の跡地は
アメリカ軍に接収されました。
1958年(
昭和33年)に全面返還された後、
航空自衛隊岐阜基地として使用されています。
この学校は、戦時中の日本の航空兵力育成に重要な役割を果たしました。少年飛行兵たちは、ここで航空機の整備技術を学び、戦後の日本の航空技術の発展にも貢献したと考えられます。