岡本全勝

岡本全勝氏は、日本の行政官であり、特に地方財政、中央省庁改革、そして東日本大震災からの復興といった重要な分野で貢献しました。1955年1月1日、奈良県に生まれた岡本氏は、地元の高校を卒業後、東京大学法学部で学び、1978年に自治省の門を叩きました。

官僚としてのキャリアは、地方財政部門を中心に展開しました。自治省時代には、本省の財政課や交付税課で要職を務める一方、徳島県、鹿児島県、富山県といった地方自治体にも出向し、現場での行政運営にも深く携わりました。特に富山県では総務部長として、地方の実情に根差した政策立案・執行に尽力しました。また、2001年の中央省庁再編に際して設置された省庁改革本部の参事官として、国の組織改革にも関わりました。

2001年に自治省が総務省へ再編された後も、岡本氏は引き続き総務省の要職を歴任しました。自治財政局の交付税課長や、大臣官房総務課長といった、省内でも枢要なポストを担いました。行政実務だけでなく、教育活動にも熱心に取り組み、東京大学大学院の教授（文部科学教官併任）をはじめ、一橋大学、慶應義塾大学、日本大学などで教鞭を執り、多くの学生や若手官僚の育成にあたりました。

中央省庁でのキャリアは内閣の政策立案にも及びました。2006年からは内閣府や内閣官房にて、「再チャレンジ」政策の担当審議官として、意欲ある人々の再挑戦を後押しする環境整備に携わりました。

麻生内閣が発足すると、岡本氏は内閣総理大臣秘書官に就任しました。これは、総務省出身者としては初めての抜擢でした。このポストでは、入省年次が最も古かったことから、他の秘書官をまとめる筆頭格とされていました。在任中には、経済財政諮問会議の場で、当時の麻生太郎総理が消費税率引き上げについて言及した際、即座にその発言を議事録から削除するよう求める異例の対応を取り、周囲を驚かせたという逸話も残っています。

鳩山由紀夫内閣の成立により内閣総理大臣秘書官を退任した後、岡本氏は消防大学校長、次いで自治大学校長を務めました。2011年3月の東日本大震災発生後は、日本の復興に向けた最前線に立つこととなります。内閣府の被災者生活支援対策本部の事務局次長として被災地支援に尽力し、その後、復興庁の設立に伴い、その統括官、そして最終的には事務次官にまで昇り詰め、震災からの復興事業を牽引しました。長年にわたり、被災地の再生という国家的な課題に対してその手腕を発揮しました。

復興庁事務次官を退任した後も、内閣官房参与や福島復興再生総局事務局長として、引き続き復興関連業務に携わりました。2020年9月にこれらの公職から退いた後、現在は市町村職員中央研修所（市町村アカデミー）の学長として、地方自治を支える人材育成に力を注いでいます。

岡本氏はその知性と実務能力で知られており、かつて総務大臣政務官を務めた景山俊太郎氏からは「知恵者」と評され、その活躍に期待が寄せられていました。また、ファッションにもこだわりがあり、ソフト帽を愛用する姿が知られています。公務における多忙な職務の傍ら、地方財政や行政改革、復興に関する多くの著作を世に送り出しており、その知見を広く発信しています。2025年春には、これまでの功績が認められ、瑞宝重光章を受章することが決定しています。

もう一度検索