地方財政

地方財政とは

地方財政は、地方公共団体が住民に対して行政サービスを提供する上で不可欠な経済的な基盤です。地方自治法に基づき、一般会計と特別会計に区分され、それぞれ歳入と歳出が管理されています。統計上は、官庁会計と公営事業会計に分けられます。

会計の原則

地方財政における会計は、厳格なルールに基づいて運営されます。

総計予算主義: 一会計年度におけるすべての収入と支出は、歳入歳出予算に組み込まれなければなりません。
会計年度独立の原則: 各会計年度の歳出は、その年度の歳入によって賄われる必要があります。ただし、継続費の繰越、繰越明許費、事故繰越、歳計剰余金の繰越、翌年度歳入の繰上充用、過年度収入・過年度支出などの例外も認められています。

会計の種類

一般会計

地方公共団体の基本的な活動を支える会計で、主な歳入には地方税、使用料・手数料、国庫支出金、地方交付税、地方譲与税、地方債、雑入があります。歳出は、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、警察費（市町村では消防費）、教育費、災害復旧費、公債費、諸支出金、予備費などで構成されます。

特別会計

特定の事業を行うために設けられる会計で、地方財政法や個別法、条例に基づいて設置されます。

予算

予算は、地方公共団体の活動計画を数値化したもので、歳入と歳出の見積もりを示します。予算の編成、執行、決算は、地方財政運営の重要な要素です。

財政指標

地方財政の健全性を測るために、様々な指標が用いられます。

財政力指数: 地方公共団体の財政力を示す指標で、1に近いほど財政力が高いとされます。
標準財政規模: 地方公共団体が通常水準の行政サービスを提供する上で必要な一般財源の目安となる数値です。
経常収支比率: 財政構造の弾力性を示す指標で、低いほど財政の柔軟性が高いとされます。人件費や扶助費などの経常的な経費が歳出に占める割合を示し、目安として75%～80%未満が妥当とされます。95%以上になると総務省のヒアリング対象となります。
起債制限比率、公債費負担比率: 公債費に関連する指標で、地方債の発行や事業の制限に関わります。
健全化判断比率: 実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の4指標から構成され、財政の健全性を判断します。各比率が一定の基準を超えると、財政再建団体や財政健全化団体の対象となります。
資金不足比率: 各公営企業ごとの資金不足額の事業規模に対する比率であり、これが生じた場合には資金不足の早期解消を図る必要があります。

時効

地方自治法では、金銭債権の消滅時効が5年と定められています。

地方財政法

地方財政法は、地方公共団体の財政運営の基本原則を定める法律です。国と地方の財政関係についても規定し、地方公共団体の経費負担の原則や国による経費負担の例外などを定めています。

国と地方の関係

国と地方の財政は密接に結びついており、地方財政は国からの補助金や交付金に大きく依存しています。地方税収入が歳入に占める割合は3割程度であり、「三割自治」と揶揄されることもあります。地方分権の推進によって、地方への税源移譲が求められています。

地方交付税交付金

地方公共団体間の財政格差を是正するために、国から地方公共団体に交付されるお金です。

国庫支出金

国が地方公共団体に交付する支出金で、使途が特定されています。国庫負担金、国庫委託金、国庫補助金があります。

地方債

地方債は、地方公共団体が資金を調達するために発行する債券です。以前は発行に総務大臣や都道府県知事の許可が必要でしたが、現在は協議で可能となっています。地方債残高の膨張は課題となっています。

課題

地方財政には、以下の課題があります。

財政の健全化: 財政赤字や債務残高を減らし、持続可能な財政運営を目指す必要があります。
地方への財源移譲: 地方分権を推進し、地方公共団体が自主的に財源を確保できるような仕組みを作る必要があります。
透明性の確保: 会計処理や情報公開を徹底し、住民の理解と信頼を得る必要があります。特に、公営企業会計を含む連結ベースでの透明性の確保が重要です。

参考文献

神野直彦『財政学』（有斐閣、2002年）
和田八束・野呂昭朗・星野泉・青木宗明編『現代の地方財政　新版』（有斐閣、1999年）

関連項目

財政再建団体
財政健全化団体
財政再生団体
地方分権
財務

外部リンク

* 地方財政法（昭和二十三年法律第百九号）.e-Gov法令検索. 総務省行政管理局

もう一度検索