岡本章生

岡本 章生（おかもと あきお、1942年11月8日生）は、日本の音楽シーンに大きな足跡を残したトランペット奏者である。特に、日本の5大ビッグバンドの一つとして知られる名門オーケストラ、ゲイスターズの7代目リーダーとして長年にわたりその活動を牽引したことで知られる。

京都府に生を受けた岡本は、若くして音楽の道に進むことを決意し、18歳で上京した。プロのキャリアは「長谷川武とジョリージョーカーズ」でスタートさせ、その後も「木谷二郎とブルーソックス」、「スマイリー小原とスカイライナーズ」といった名だたるバンドで腕を磨いた。そして、やがて才能を認められ、花形トランペッターとしてゲイスターズの一員となるに至った。

ゲイスターズは、日本のビッグバンド界を代表する存在であり、その歴史は古く、戦後間もない1949年に初代リーダーの多忠修氏によって創設された。その歴史の中で、初期にはフランキー堺氏や秋吉敏子氏といった錚々たる顔ぶれが在籍し、スウィングジャズの正統派として高い評価を獲得した。歴代リーダーは多忠修氏、野々村直造氏、エデー岩田氏、浜水俊朗氏、白磯孝氏、森剛康氏と続き、1972年に岡本章生がその重責を担うことになった。彼はバンドの7代目のリーダーとして、新たな時代を切り拓いていく。

リーダーに就任してからのゲイスターズは、岡本章生の指揮のもと、テレビやラジオといったメディアを中心に活動の場を広げた。特に、TBSの伝説的な番組『8時だョ!全員集合』には14年間にわたりレギュラー出演し、日本のトップアーティストたち、実に延べ2800組にも及ぶ歌手のバックバンドを務め上げたことは、その功績の中でも特に際立っている。この番組を通じて、彼とゲイスターズのサウンドは広くお茶の間に浸透し、多くの人々に親しまれる存在となった。その他にも、『シャボン玉こんにちは』や『レッツゴーヤング』、『輝く!日本レコード大賞』、『ザ・ベストテン』、『NHK紅白歌合戦』、『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』など、数多くの人気番組に出演し、その存在感を示し続けた。

ゲイスターズの音楽性は、ハリー・ジェイムス、レイ・アンソニー、グレン・ミラーといった、いわゆる白人系スウィングジャズの伝統的なスタイルを基盤とする。これらの往年の名曲を現代に蘇らせる一方で、1980年代以降は内堀勝氏や、当時のバンドメンバーでもあったテナーサックス奏者の貫田重夫氏といった新世代のアレンジャーによる楽曲も積極的に取り入れ、常に新しいサウンドを追求した。これは、当時のゲイスターズの先進的な音楽的方向性を示すものであった。

岡本章生自身のトランペットソロは、その哀愁を帯びた響きと甘く艶やかな音色が特徴である。スウィングジャズ黄金期の旋律を、深い情感を込めて吹き上げるその演奏は、多くの聴衆を魅了した。彼は単に卓越した演奏技術を持つだけでなく、その眉目秀麗な容姿も相まって、当時の音楽シーンにおいてひときわ輝きを放つ華やかな存在であった。

彼の演奏の中でも特に印象深いものとして、『8時だョ!全員集合』において、コメディアンの加藤茶氏が「ちょっとだけよ」のギャグを披露する際に流れる楽曲「タブー」のトランペットソロが挙げられる。この特徴的なメロディは、番組を象徴するサウンドの一つとして、多くの日本人の記憶に刻まれている。

トランペット奏者としての岡本章生は、いくつかのリーダーアルバムも発表している。代表的な作品としては、

『ブルージーンと皮ジャンパー』（トランペットソロアルバム、1970年）
『The eight seasons （八季）』（1981年）
『Ⅰleft my heart in san francisco （想い出のサンフランシスコ）』（1982年）
『G.S』（1982年）
* 『新グレンミラー物語』（strawberry dance band名義、1990年）

などがある。これらの作品は、彼の音楽的な軌跡を知る上で貴重な資料となっている。

トランペット奏者として、そして日本のビッグバンドゲイスターズのリーダーとして、岡本章生は日本の音楽史、特にテレビ音楽やエンターテイメントの世界において多大な貢献を果たした人物である。その技術に裏打ちされた情熱的な演奏と、華やかな存在感は、今もなお多くの人々の心に残る記憶として語り継がれている。

もう一度検索