岡本重之

岡本重之 (おかもと しげゆき) は、江戸時代前期、慶安4年(1651年)に誕生しました。宝永8年(1711年)2月20日没、享年61歳。赤穂藩浅野氏の家臣として、大阪留守居役400石の地位にありました。通称は次郎左衛門です。

彼の家系は、赤穂浪士として知られる大石信清と深く繋がっています。岡本重之は、大石信澄の次女を妻に迎えました。信澄は450石の知行高を持つ浅野家家臣であり、信清はその二男にあたるため、岡本重之は大石信清の義兄という立場にあったのです。

元禄14年(1701年)3月14日に発生した、浅野長矩と吉良上野介の刃傷事件の後、岡本重之は筆頭家老大石良雄の指示に従い、大阪藩邸を引き払い、4月10日に赤穂へ帰郷しました。

『江赤見聞記』には、赤穂城開城前に大石良雄に神文血判書を提出した79人の一人として岡本重之の名前が記されています。しかし、他の史料にはその記載がないため、彼の関与の度合いは諸説あります。

赤穂城開城後は、伏見に移り住み、大石良雄らによる浅野家再興運動に携わりました。しかし、元禄15年(1702年)7月、浅野長矩の弟、浅野長広の広島浅野宗家への永預けが決まり、浅野家再興の望みが絶たれました。

この事態を受け、大石良雄は仇討ち計画への転換を決定。一度神文を返し、脱盟を希望する者を募りました。岡本重之はこの時、脱盟を選択したのです。

その後、岡本重之は山城国乙訓郡で静かに暮らしました。そして、宝永8年2月20日、その生涯に幕を閉じました。彼の遺体は嵯峨称念寺に改葬され、法号は真堂義融居士とされています。

岡本重之の生涯は、赤穂事件という激動の時代の中、複雑な立場の中で生きた一人の武士の姿を映し出しています。浅野家家臣としての忠義、義兄としての立場、そして再興運動への参加と脱盟という選択。彼の決断は、彼を取り巻く状況と、彼自身の信念が複雑に絡み合った結果だったと言えるでしょう。彼の生き様は、歴史の影に隠された多くの武士たちの葛藤を彷彿とさせ、今もなお研究者の興味を引きつけています。

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