岩下洞穴

岩下洞穴：古代人の息吹を感じる遺跡

岩下洞穴は、長崎県佐世保市松瀬町に位置する、旧石器時代から古墳時代にかけての複合遺跡です。この洞穴は、石盛岳の中腹に開口しており、南向きで日当たりの良い場所にあります。眼下には相浦川が流れ、自然豊かな環境に囲まれています。洞穴の規模は、高さ約2m、奥行き約5m、幅約17mで、現在は土砂の堆積により入口が狭くなっています。発掘調査後は、鉄柵で囲まれ、一般の立ち入りは禁止されています。

発見と調査

岩下洞穴が発見されたのは、昭和39年（1964年）のことです。近くの中学生が偶然発見し、その後、麻生優らによって昭和41年（1966年）まで3回にわたる発掘調査が行われました。麻生は、出土品を通じて当時の人々の行動様式を解明することに重点を置き、考古学における「原位置論」の検証を試みました。

出土品から見える古代人の生活

発掘調査では、27体もの人骨をはじめ、約4万点に及ぶ土器片や石器、食料の残骸が出土しました。特に注目されるのは、縄文時代草創期の人骨です。これらの人骨は、押形文土器と同じ地層から発見され、小柄で下顎と下肢が発達していたことがわかっています。また、下顎の前歯が激しく磨耗していることから、獣皮を歯で噛み締めてなめしていたと推測されています。これは、当時の人々が屈強なハンターであり、獣皮を生活に利用していたことを示唆しています。

土器は、草創期の押形文土器から始まり、貝殻条痕文、無文、突瘤文、轟式、曽畑式、阿高式へと変遷しています。石器は、石鏃が多数出土しており、一部には磨製石鏃も見られます。磨製石鏃は、押形文土器と同じく草創期の地層に集中しており、時代が下るにつれて打製石鏃に切り替わっていったと考えられます。その他、食料としていた多様な獣骨が発見され、当時の人々が肉食中心の食生活を送っていたことが明らかになりました。

岩下洞穴は、洞穴内を居住場所と埋葬場所に使い分けていたことが特徴です。20体を超える人骨は、頭や胸に石を乗せた抱石葬という独特の埋葬方法で埋葬されており、全国的にも珍しい事例です。これらの出土品は、当時の人々の生活様式や文化、埋葬方法を知る上で貴重な資料となっています。

アクセス

佐世保市営バス「岩下洞穴入口」下車、徒歩2分
西肥バス「天の久保」下車、徒歩3分
大野まめバス「岩下洞穴前」下車すぐ
松浦鉄道 左石駅下車、徒歩30分

関連情報

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岩下洞穴は、古代人の息吹を感じることができる貴重な遺跡です。佐世保市を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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