岩井半四郎 (5代目)

五代目 岩井 半四郎

五代目岩井半四郎（ごだいめ いわい はんしろう）は、安永5年（1776年）に江戸で生まれ、化政期に女形として名を馳せた著名な歌舞伎役者です。彼の幼名は長松（ちょうまつ）で、屋号は大和屋とされています。また彼は、俳名として梅我や杜若、通称では杜若半四郎や眼千両、大太夫なども用いられました。

来歴

半四郎は、父である四代目岩井半四郎の息子として、安永5年に江戸に誕生しました。1787年、彼は桐座にて岩井粂三郎の名で初舞台を踏むことになります。その後、1804年に中村座で五代目岩井半四郎を襲名し、先代から受け継いだ女形の伝統を守りました。

彼の演技は「目千両」と称されるほどの魅力的な眼差しと、おちょぼ口が印象的で、美しい容姿と愛嬌を兼ね備えた名優でした。その結果、すぐに江戸の歌舞伎界で人気を博し、多くのファンを魅了しました。

また、演技力も素晴らしく、四代目鶴屋南北との共演で生世話物の悪婆役を得意とし、若衆や荒事の役柄も巧みにこなしました。文政3年（1820年）には、五代目松本幸四郎や三代目坂東三津五郎と共に上方へ進出し、以降多くの役者がこの潮流に続くようになりました。

文政5年には、長男の二代目岩井粂三郎、次男の初代岩井紫若（後の七代目岩井半四郎）との親子3人で江戸の三座の立女形を受け持ち、その名声を高めました。天保3年（1832年）の11月には俳名の岩井杜若と名乗り、弘化元年の初めには剃髪して松下庵永久と号し、正式に役者としての活動を終えました。

逸話

半四郎は、彼の自然体の演技で多くの観客を魅了しました。「お帰りあそばしませ」と一言言うだけで、相手の俳優は自らの妻よりもいとしく感じてしまうほどの存在感を持っていたと言われています。名人・五代目松本幸四郎は、共同演技を通じて「彼と一緒に演じていると、まるで桜の散る中を歩くようだ」と絶賛しました。

彼の魅力は、悲劇よりも活力に満ちた女性を演じる際に発揮されました。特に「お染の七役」の中の「土手のお六」という役は、彼自身によって創作され当時としても斬新な表現として評価されました。このように五代目岩井半四郎は、歌舞伎界において重要な存在であり、多くの功績を残した名優として記憶されています。

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