岩崎灌園

岩崎灌園について

岩崎灌園（いわさき かんえん）は、江戸時代後期（1786年7月21日 - 1842年3月10日）に活躍した本草学者です。彼は江戸下谷に生まれ、名は常正、通称源蔵として知られています。父親は直参の徒士であり、幼少期から本草学に深い興味を抱いて育ちました。灌園は小野蘭山に本草学を学び、薬草の採取活動を行いながら若年から本草家としての基盤を築きました。文化6年（1809年）には徒士見習いとして役職に就き、文政11年（1828年）には彼が長年の努力を注いだ『本草図譜』がついに完成に至ります。

本草図譜の特徴

『本草図譜』は、灌園が20代から準備に取り組み、約20年の歳月をかけて丹念に仕上げたもので、全96巻から成り立っています。これまでの本草書での図版には精密さに欠ける部分があったことから、彼は自ら2000種もの植物の図を描き、集大成しました。特に、この著作は李時珍の『本草綱目』に基づいた配列が特徴です。第5巻から第10巻までは木版印刷により出版され、他の巻は模写を通して流通しました。灌園の描いた植物には、自身で写生したものに加えて、ヨハン・ヴィルヘルム・ヴァインマンの『花譜』からの転載も含まれています。

著作とその重要性

岩崎灌園の著作には『本草図譜』の他に、『草木育種』『救荒本草通解』『日光山草木の図』などがあり、彼の研究成果を示す重要な文献となっています。また、彼の著作の一部はデジタル化され、国立国会図書館をはじめとする各種デジタルコレクションで公開されています。しかし、現存しない著作も存在し、それらは未発見のまま名簿に名前が残っています。

その中でも特に重要なのが、国立国会図書館が所蔵する原本番号「特1」の著作です。これは幕末から明治期の植物学者白井光太郎が収集して寄贈したものとも言われています。一方、「特7」は同じ時期の伊藤圭介が関与した著作を指しています。

まとめ

岩崎灌園の功績は、日本での本草学の発展に大きく寄与したと評価されています。彼の著作はきわめて貴重であり、現在も多くの研究者や愛好者に利用されています。灌園の研究は、薬草とその効能に関する体系的な理解を深めるうえで重要な資料として位置づけられています。彼の描いた精緻な植物の図は、美術的な価値も持ち合わせており、学術的な意義だけでなく視覚的な楽しさも提供しています。彼の精力的な活動は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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