白井光太郎

白井光太郎：日本の植物学・菌類学の先駆者

白井光太郎（しらい みつたろう、1863年7月17日 - 1932年5月30日）は、日本の植物学者・菌類学者であり、日本の植物病理学や本草学史の分野を開拓した人物です。

生涯

1863年、白井光太郎は江戸の霊岸島で誕生しました。東京帝国大学理科大学（現東京大学理学部）を卒業後、東京農林学校（後の東京大学農学部）で教鞭を執り、植物学講座を担当しました。1899年から1901年までドイツへ留学し、植物病理学の研究に専念しました。この留学中に、日本国内では研究が進んでいなかった植物寄生菌の写生図や標本を収集し、ヨーロッパで記載されている種との比較研究を行い、種の確定や新種記載に大きく貢献しました。

帰国後、1906年に東京帝国大学農科大学に世界初となる植物病理学講座を新設し、教授として後進の指導にあたりました。また、1915年から1919年まで東京農業大学の教授も兼任し、幅広い分野で教育活動を行いました。

自然保護にも尽力し、1916年には奈良県吉野山で自然保護を訴える講演を行い、吉野熊野国立公園の指定に貢献しました。1920年には日本植物病理学会を設立し、初代会長に就任するなど、学会の発展にも大きく寄与しました。1929年に東京帝国大学を定年退官し、1932年に亡くなりました。

研究内容・業績

植物病理学

白井光太郎は、日本における植物病理学研究の初期を牽引した人物です。植物に感染する病原菌の分類や記載を行い、50種類以上の新種または新変種を記載しました。彼の業績は、日本の植物病理学の基礎を築いたと言えるでしょう。タケの赤因子病菌属 Shiraia P. Hennings やマダケの小団子病菌属 Shiraiella Hara など、白井の名を冠した分類群も多数存在します。

本草学・博物学

白井は伝統的な本草学にも精通しており、日本博物学史・日本生物学史の研究を開拓しました。彼の研究は、日本の伝統的な知識と近代科学を結びつけるものであり、学術的に高く評価されています。

考古学

考古学者・古物収集家としても知られ、1884年に弥生土器と呼称される契機となる壺を発見しました。この発見は、日本の考古学研究に大きな影響を与えました。

史蹟名勝天然紀念物保存

史蹟名勝天然紀念物保存にも深く関わり、日本の文化財保護に貢献しました。

栄典

1900年 - 勲六等瑞宝章
1906年 - 勲五等瑞宝章

著書

エイサ・グレイ、白井光太郎訳『植物自然分科検索表』(1888年)
白井光太郎、三宅市郎『日本菌類目録』(1917年)
李時珍（著）, 鈴木真海（訳）, 白井光太郎（校注）『頭註国訳本草綱目』全15巻（1929-1934年）
木村陽二郎 (編)『白井光太郎著作集』（全6巻、1985-1990）

白井光太郎は、日本の植物学、菌類学、植物病理学の発展に多大な貢献をしただけでなく、博物学史や考古学、文化財保護にも足跡を残した、多才な学者でした。

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