岩槻電気軌道

岩槻電気軌道の歴史と事業運営

岩槻電気軌道（いわつきでんききどう）は、埼玉県南埼玉郡岩槻町でかつて計画されていた軌道路線です。このプロジェクトは実現しませんでしたが、電力供給を通じて地域の発展に寄与したのが特徴です。特に、岩槻町に初めて電灯を提供したことは、地域の歴史において重要な意味を持ちます。

計画の始まり

この電気軌道の計画は、1911年（明治44年）に74名の発起人によって始まりました。中でも才賀藤吉（才賀電機商会）や、当地の有力者である斎藤善八が中心となり、大宮（現・さいたま市）から岩槻を経て粕壁（現・春日部市）までの路線の敷設を目指しました。この年の3月11日、内閣総理大臣および内務大臣の連名で規制の特許状が交付されました。

このプロジェクトでは、岩槻町を中心に周辺地域との交通網を構築し、産業の発達や商工業の振興を促進する意義が謳われていました。具体的なサービス内容には、地方への電力供給や、そのための機械器具の販売や貸出が含まれていました。

電灯事業の展開

岩槻電気軌道は、1915年（大正4年）から多くの地域に電燈サービスを開始しました。からの事業拡大により、周辺の南埼玉郡や北葛飾郡にわたって電力供給を行い、相当な収益を上げていました。これらの電気供給は、主に埼玉県道さいたま春日部線や、日光御成街道沿いにインフラが整備される形で行われました。

軌道建設の障害

一方で、電気軌道の実現に向けた動きは資金調達と用地の確保に苦しみ、なかなか進展しませんでした。電灯事業が自前の火力発電から、利根発電株式会社からの電力供給に切り替わったことも一因として考えられています。
また、発起人の一人である才賀藤吉が経営していた才賀電機商会は、経営破綻の影響で業務が停滞することとなります。彼は以前、王子電気軌道（現在の都電荒川線）の社長を務めていたため、地域の有力者たちは彼の経験を買って事業を託しましたが、状況は厳しいものでした。

事業の再編

1918年（大正7年）には、内務省が岩槻電気軌道の特許を取り消し、同時に社名を「岩槻電気」に変更。ついには1919年（大正8年）に埼玉電灯に合併されてしまいます。計画された軌道の一部は、後に東武野田線となることが決定しました。

このように、岩槻電気軌道は、電灯事業に成功したものの、計画された軌道事業は頓挫し、最終的には埼玉電灯という形で地域に残りました。地域の発展を支えたこの歴史は、今もなお地域の人々の記憶に残る重要な出来事と言えるでしょう。

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