岩殿山城

岩殿山城について

岩殿山城（いわどのやまじょう）は、山梨県大月市賑岡町に位置していた日本の山城で、その標高634メートルの岩殿山に築かれています。この城は、戦国時代における東国の城郭の中で特に堅固さで知られており、甲斐国都留郡の小山田氏の本拠地として機能していました。現在は山梨県指定の史跡として「岩殿城跡」として保護されています。

概要

岩殿山は相模川水系である桂川と葛野川が合流する地点の西側に立地し、その頂上の南側には「鏡岩」と呼ばれる礫岩が露出した絶壁があり、高さは約150メートルに及びます。この山の近くには大月市街地が広がり、大月駅からは徒歩で約1時間で山頂に辿り着けます。山頂からは富士山の絶景が望め、山梨百名山や秀麗富嶽十二景、関東の富士見百景にも選定されています。

また、山の南側と桂川の間には中央自動車道が通っていますが、1972年には岩殿山で大規模な地滑りが発生し、中央自動車道の通行が123日間にわたり停止したこともあります。

歴史

江戸時代後期に編纂された『甲斐国志』によれば、岩殿山には大同元年（806年）に創建された天台宗寺院の円通寺が存在し、その周辺には観音堂や三重塔などもありました。13世紀に入ると、ここは修験道の重要な場所として栄えました。また、16世紀においては、甲斐の守護である武田氏や国衆の小山田氏がこの地を治めていました。

岩殿山城の築城時期は不詳ですが、小山田氏の本拠地である谷村館の詰城説が有力です。ただし、近年の研究では、武田氏によって相模との境界を守るための城として築かれた可能性も指摘されています。岩殿山の地理的条件から、城は自然の地形を利用した防御に適した形状をしており、外敵からの防衛に役立っていたと考えられています。

織田信長と小山田信茂

天正10年（1582年）、織田信長と徳川家康による武田領への侵攻が行われた際、小山田信茂は新府城から武田勝頼を岩殿山城へ迎えましたが、信茂は途中で離反し、勝頼は天目山で自害する運命を辿りました。この出来事は岩殿山城の重要性を物語っています。信茂は後に織田氏に仕官し、最終的には処刑されてしまいます。

その後、本能寺の変で信長が死去すると、甲斐国においても不安定な状況が広がり、後北条氏が岩殿山城を攻略しました。この城は徳川家康の時代にも要塞として機能し続けました。

現在の岩殿山

今では岩殿山の山頂には明治時代に名を馳せた陸軍大将、乃木希典の詩碑が存在しています。乃木が1879年に登山した際の記念として建てられたものです。

岩殿山城は、その歴史的価値から現在も研究や考古学的調査が行われており、多くの観光客や歴史ファンに親しまれています。岩殿山の自然や景観も魅力的で、訪れる人々に深い印象を与えています。

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