岩波写真文庫

岩波写真文庫の全貌

岩波写真文庫（いわなみしゃしんぶんこ）は、1950年代に岩波書店から出版された貴重なテーマ別写真集のシリーズです。このシリーズは、全286巻が出版された後も、何度も復刻されています。また、当初は全てモノクロ写真で構成され、カラー写真は使用されていませんでした。その編集長には名取洋之助が就任し、彼のビジョンのもとでこのプロジェクトが立ち上がりました。

出版の背景と成果

1950年6月10日に始まった岩波写真文庫は、当時の教育界で提唱されていた視覚教育の需要に応えるために企画されました。1949年の夏、アートペーパーの取り扱いが自由化されるという情報を受け、視覚的な媒体を通じて新しい教育方法を模索しようという試みが始まりました。このような新しい出版スタイルは、従来の出版モデルが抱えていた困難を克服し、斬新で魅力的なものとなりました。

また、1953年には菊池寛賞を受賞するなど、その成功は確かなものでした。一冊の価格は100円という手頃な設定で、多くの読者に手に取られ、経済的にも安定した成功を収めました。

復刻版と新たな展開

その後、岩波写真文庫は1987年から1990年にかけて復刻ワイド版として再刊行され、判型がA5に変更されることで、より多くの人々に手にする機会を提供しました。この復刻版は、全114巻という大規模なものでした。

さらに、2007年から2008年には複数の編者によるセレクション形式での再刊行が行われました。特に、赤瀬川原平による『腹ぺこ時代のシャッター音―岩波写真文庫再発見』においては、シリーズ内の24冊を紹介したエッセイが発表され、多くの関心を集めました。このセレクションでは、選者ごとに5冊ずつが再刊されており、赤瀬川氏だけは特別に10冊取り上げられました。

アーカイヴスの役割

2023年には、「岩波写真文庫アーカイヴス」が刊行され、特に原爆被害に焦点を当てた作品が復活しました。この中には、1952年に初刊された『広島――戦争と都市』に関連する、名取洋之助と長野重一が撮影したが未使用の広島市内の写真が含まれています。これにより、過去の歴史を知らしめる重要な資料としても機能しています。

結論

岩波写真文庫は、年代を超えて多くの人々に影響を与え、視覚文化の発展寄与した重要な出版物です。その独自のアプローチは、未来の出版物にインスピレーションを与え続けています。関心を持つ人々がこのシリーズを手にし、歴史と視覚伝達の深さを実感することは、今後も大切なことと言えるでしょう。

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