岩瀬徳三郎

岩瀬徳三郎（いわせ とくさぶろう）は、明治20年（1887年）8月11日に千葉県銚子市で生まれ、昭和46年（1971年）2月2日に生涯を閉じました。彼は日本の化学技術者として、また工学博士として、その名を広く知られています。特に、東ソー（旧東洋曹達工業）および東曹産業の創業者としての功績は特筆に値します。

岩瀬は大地主である岩瀬利右衛門の三男として生まれました。1914年に九州帝国大学工学部応用化学科を卒業後、同大学院に進学。その後、アメリカへ留学し、最先端の化学技術を学びました。渡米の際、安野譲と知り合ったことがきっかけで、1918年に日本曹達工業（現在のトクヤマ）に入社。取締役技師長、専務取締役を歴任し、その技術力と経営手腕を発揮しました。

1935年、岩瀬は東洋曹達工業（現東ソー）を設立し、初代社長に就任。日本の化学産業の発展に大きく貢献しました。1940年には、「アンモニアソーダ工業用生石灰焼成に関する研究」で九州帝国大学から工学博士の学位を授与されました。この研究は、アンモニアソーダ法によるソーダ工業の効率化に大きく貢献し、日本の化学産業の発展に寄与しました。

岩瀬徳三郎は、化学技術者、経営者としてだけでなく、教育者としても多くの人材を育成しました。彼の指導を受けた人々は、日本の化学産業の各分野で活躍し、その発展を支えました。また、地域社会への貢献も大きく、東ソーの事業を通じて、地域経済の活性化にも尽力しました。

妻・つねとの間には、徳郎、和子、義郎、秀郎、幹子の5人の子供と、養子の寅四郎をもうけました。長兄の為吉は、家督を相続し、所有地の干潟の改良に尽力。千葉県議会議員として、干潟水害予防組合を立ち上げ、新川の改修を実現しました。孫の岩瀬瓊子は、キッコーマン茂木家の茂木賢三郎の妻です。

岩瀬徳三郎の生涯は、日本の化学産業の発展とともにありました。彼の先見の明とたゆまぬ努力は、東ソーを世界的な化学企業へと成長させ、日本の産業界に大きな足跡を残しました。彼の功績は、現在も東ソーの企業理念として受け継がれ、社員たちの指針となっています。

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