岸壁

岸壁とは

岸壁（がんぺき）とは、港湾内の埠頭に設置されている船舶の係留施設の一種です。これらはしばしば係船岸壁または係船岸（けいせんがん）とも呼ばれ、港湾法においては港湾施設の一部と位置づけられています。岸壁は水面に対して壁のような構造を持ち、船の係留を行うことで、人や貨物の積み卸しを可能にします。

また、岸壁と同様の構造ですが水深が4.5m未満のものは「物揚場（ものあげば）」と呼ばれ、区別されています。ただし、岸壁と物揚場の間には本質的な違いはないため、ここでは岸壁構造物全般について解説します。

岸壁や桟橋には、ナンバーやアルファベットの表示がされており、これらは船舶の航行や国際信号旗に活用されます。

構造区分

岸壁と物揚場（以下「岸壁」と呼ぶ）は、その構造によって重力式岸壁と矢板式岸壁に分けられます。また、船舶の係留施設には、岸壁と物揚場の他に桟橋も存在します。桟橋は、多くの場合、杭によって支えられ、船舶を係留する部分が壁状ではない点が特徴です。

重力式岸壁

重力式岸壁は、ケーソンやセルラーブロック、L型ブロックといった壁体を基礎捨石の上に設置し、その重さによって安定性を保つ形式です。壁体の背後には裏込石があり、さらには土砂で埋められています。このため、重力式は波や船舶が着岸した際の衝撃に対する耐性が高く、非常に堅固ですが、設置には地盤がしっかりしていることが求められ、軟弱地盤や大水深の場所では適さないことが欠点です。加えて、地震に対しても弱いとされています。

矢板式岸壁

矢板式岸壁は、鋼矢板を水底に打ち込み、その背後を土砂で満たす形式です。この岸壁は基礎を必要としないため、比較的短期間で建設することが可能ですが、耐久性は劣るというデメリットがあります。矢板の安定を図るために、背後に固定設置されたアンカーブロックなどと結びつけられたタイロッド（ロープ）が一般的に用いられます。

岸壁の水深

岸壁の水深が深いほど、喫水の深い大型の船舶を係留することが可能です。通常、総トン数が2000t程度の小型船舶は水深4.5mの岸壁に係留しますが、荷物の積み卸しができるかどうかは水深の条件によります。港湾全体で見ると、殆どの岸壁は水深10m程度ですが、国際物流の進展に伴いコンテナ船が大型化しているため、コンテナ船用岸壁では水深12m以上が求められるようになりました。

現在、アジア-北米や欧州を結ぶ長距離運航に従事する大型コンテナ船が利用するコンテナ埠頭の岸壁水深は、一般的に15-16m程度です。日本国内でこの基準を満たすコンテナターミナルがある港湾は、東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港、清水港、および北九州港などが該当します。

もう一度検索