係留施設

係留施設とは

係留施設とは、船舶が港湾内で安全に停泊するための施設全般を指します。これらの施設は、船舶が陸地に接岸するためのものと、沖合で停泊するためのものに大別されます。係留施設は、船舶の安全な航海と港湾の円滑な運営に不可欠な役割を果たしています。

接岸施設

接岸施設は、船舶が陸地に直接接岸するための施設で、その形状によってさらに細かく分類されます。

岸壁・物揚場

岸壁や物揚場は、陸地沿いに設けられた構造物であり、船舶が直接接岸するための場所です。これらの施設は、貨物の積み下ろしや旅客の乗降に利用されます。

桟橋

桟橋は、陸地から水域に向かって突き出した橋のような構造物です。これにより、船舶はより沖合に近い場所で接岸できるようになります。

浮桟橋

浮桟橋は、水面に浮かべられた箱状の構造物で、錨で固定され陸地と連結されています。このタイプの施設は、水位の変化に柔軟に対応できる利点があります。

これらの接岸施設には、船舶が安全に接岸できるように、防舷材が設置されています。防舷材は、船舶と施設が接触した際に生じる損傷を防止する役割を果たします。また、接岸した船舶は、錨を下ろし、ロープやワイヤーを係船柱と呼ばれる突起に結びつけることで停泊します。これらの施設は、通常、バースという単位で区切られ、一つのバースに一隻の船舶が接岸することが想定されています。バースの長さは、数十メートルから300メートルにも及ぶことがあります。

マリーナにおいては、小型艇用に特化したクリートが桟橋に設置され、錨を使用せずにフェンダーを併用して係留することが一般的です。

沖がかり施設

沖がかり施設は、船舶が沖合で停泊するための施設で、主に係船浮標とドルフィンに分類されます。

係船浮標

係船浮標は、海面に浮かぶブイであり、船舶はこのブイにロープを結びつけて停泊します。この施設は、水深が深い場所や、岸壁が不足している場合に利用されます。

ドルフィン

ドルフィンは、係船杭とも呼ばれ、海底に打ち込まれた杭によって構成される構造物です。主に大型タンカーなどが利用し、沖合での安全な停泊を確保します。

沖がかり施設が設置されている海域は、通常、船舶が停泊するための泊地として指定されています。また、これらの施設はシーバースと呼ばれることもあります。

防災船着場

近年、災害時の緊急輸送路としての役割が重要視されているのが防災船着場です。東京都では、平成11年に防災船着場整備計画を策定し、東日本大震災の教訓を踏まえ、整備を進めています。隅田川、荒川、新河岸川、神田川、小名木川、江戸川などに設置されており、災害時には陸上交通網の補完や物資輸送に活用されます。埼玉県にも同様の施設が整備されています。

まとめ

係留施設は、船舶が港湾で安全に停泊するための不可欠な設備です。接岸施設と沖がかり施設のそれぞれが、船舶の種類や港湾の状況に応じて適切に利用されています。また、防災船着場の整備は、災害時の迅速な対応を可能にし、人々の安全確保に貢献しています。これらの施設は、港湾の円滑な運営と海上輸送の安全性を支える重要な基盤と言えるでしょう。

参考文献

小林義久監修・池田宗雄著、『港湾知識のABC』、青山堂書店、1994年、ISBN 4425391241

関連項目

港湾
埠頭
船舶
泊地
船だまり
係留
舫綱: 係留に使う縄。船尾の艫綱、船首の舳綱のこと。別名：遣手、手安綱、もやいなわ
ボラード: 舫綱をつなぐための柱。
鼻ぐり岩: 係留するための舫綱を通す穴が開いた岩、もしくは巻き付けられる棒状の岩など。

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